″もしも″の十二 ページ12
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ノックの音で目が覚めた。
一応時計を確認したら、おお、なんと昼まで寝ていたようだ。
完全に夜型になってしまったか…まぁ仕方ない。
元々の運命だから。
続くノック。
「はーい」
扉を開けても光が届かない所まで避難して返事。
にしても珍しいなぁ。
女中さんがご飯を置いておいてくれる以外に人が来るなんて。
「A、元気にしてますか」
「はい、お母様」
さらに驚いた。
まさかお母様にいらっしゃるとは。
優しい光を瞳に称えるその人は静かに微笑んでいて。
対面的に忌み子である私と一緒には居られないため今では離れ離れだけれども、大きく抱きしめてくれた優しい優しいお母様。
「どうされましたか?」
「ええ、いえね、あなたに嫁入りの話が来たのよ」
「嫁入り、ですか」
こんな私に?
「そう、あなたに。でも無理強いはしないから」
「………」
私は、嫁に行けないと思っていたから。
いい話だ。私が嫁に行けば少しは家の負担が減る。
家業も出来ず、嫁にも行けず。
家族に養われながら生きていくのは、もう嫌だ。
(嫌、な筈なのに)
どうしてか頷く気になれない。
どうも裏がありそうだ、という直感以外に何か、モヤモヤしたものがある。
なんだろうか、これは。
「…申し訳ありません。お断りさせて頂いても?」
「理由を聞いてもいい?」
「直感です」
「そう…」
ぎゅっと抱きしめられる。
ああ、懐かしいお母様の匂いだ。
「直感なら仕方ないわ」
こんなワガママ娘に笑って頭を撫でてくれる。
本当はお母様のお役に立ちたいけれど。
「また来るわね」
「お待ちしております」
暗闇から手を振った。
この直感の下のあるモヤモヤ。
一体何なのだろう。
なんとなく知りたいような、知りたくないような。
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レイレイン - 素敵な話ですね。とても感動しました。ありがとうございます。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年4月1日 16時