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デジャブ。本日二回目、じーっと見つめられた。
「Aさん」
「え、なに……」
物凄い力で腕を引っ張られ、転けそうになったところで慌ててベッドに手をついた。
「痛い……。いきなり手引っ張らない、で……」
図らずもこれは……。一松先生の顔の横に手をついている。
これは、少女マンガでよくみる、ベッドドンとやらではないだろうか……。
「Aさんって大胆だね」
「ひっ……」

まれに見る一松先生の満面の笑みに背筋が凍る。
「ばっ、えっ、……っ」
慌てすぎて言葉がうまく出てこない。
「……」
先生はまたわたしを見つめて笑っている。

「一松先生ー! 今度の会議についての質問なんスけどー! あれ、一松先生?」
よく響く十四松先生の声が、わたしの耳に届く。
「はーい」
なぜ返事をした、一松先生!
とっさに退こうとすれば、一松先生に手首を掴まれた。
「ああ、いたいた。今度の会議って……」
カーテンを開けた十四松先生と目が合い、数十秒。
そんな刹那が、永遠にも思えてきた頃。
「……失礼しましたー! 続けちゃってください!」
笑みを湛えた十四松先生が保健室から出ていこうとする。

「待って、違います! さっきのはっ、なにかの間違いと言うか……! って言うか、一松先生が全面的に悪いと言うか、はめられたって言うか……!」
慌てて十四松先生の腕にしがみついて弁解する。
「うんうん、わかってるって! 僕、他の人たちには言わないから! これでも口堅いから〜!」
その大きく開かれた口のどこが堅いと言うのだろうか。
「ちょ、待って、十四松先生ー! 誤解ですってばー!」

ああ、もう、最悪。わたしの高校生活最大の夢が砕け散った。
とぼとぼと一松先生のもとに戻り、ぐるぐると回る椅子に腰掛ける。
「……」
「……」
なんとも言えない沈黙が訪れ、さらに気持ちが沈んでいく。
「……十四松先生のこと、好きなの」
「だから好きじゃないってば……」
「じゃあなんで落ち込んでるの」
そう言われればそうだ。だけども胸がモヤモヤするのは変わらない。
「……大好きな少女マンガみたいな、教師と生徒みたいな、禁断の恋みたいな……。なんかそう言う、ドキドキキュンキュンするような恋がしてみたかったの。十四松先生が、憧れだったマンガの登場人物に似てて……。だから、十四松先生とマンガみたいな恋してみたかった」

この夢を人に言うと大抵、「あり得ない」「夢見すぎ」と言われる。
だから、この学校では美夜以外に言ったことがない。

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海柄  - この作品…神すぎます……凄いです!いつ見ても癒されるぅ〜!投稿お疲れ様ですっ!!次の投稿待ってます!ファイトっᕦ(ò_óˇ)ᕤ (2022年4月9日 8時) (レス) @page17 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
MATSUNO NANA(プロフ) - もう、続きは書かれないのですか?いや、すみません。気長に待ってます。楽しみにしています! (2021年5月4日 17時) (レス) id: 288501894e (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - ZUNさんは神なのだwさん» 神だなんて……。ありがとうございます! これからも喜んでいただけるよう頑張ります (2019年6月21日 17時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)
ZUNさんは神なのだw - 一松可愛いすぎでしょ!作った人…神じゃん! (2019年6月21日 17時) (レス) id: edb9ce2cd8 (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - 憂月さん» ありがとうございます!私自身も萌えてます(笑) (2019年4月26日 19時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小森桃子 | 作成日時:2019年3月26日 10時

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