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「いやあぁぁぁーっ!」
なぜこの教師は保健室のベッドで寝ているのだろう。
事の発端は数分前に遡る。

失礼しまーす……、と恐る恐るドアを開けて室内を見回してみる。
「あれ……」
珍しい。うざいくらい存在感と闇オーラを放っている一松先生がいない。
いつの間にかわたし専用、みたいになっているベッドの隣にあるデスクには、飲みかけのコーヒーが置いてあった。
会議の日、たまにつけているネクタイにはコーヒーのシミがついていたのを思い出す。
「……まあいいや〜」
とにかく眠すぎる。半分閉じた眠気眼のまま、カーテンを勢いよく開けてベッドに入った。

これが数分前の出来事である。ベッドに入ったあとかすかに感じた人肌程度の熱に気付いて、ベッドから飛び退いた。
「い、一松せんせー……」
布団を捲れば、いたのは案の定白衣姿の一松先生である。
この保健室はベッドが多いものの、県が誇る健康な学校だ。一松先生によると保健室に来るのはわたしぐらいらしい。
つまりこのベッドは、わたししか使っていない。
なぜ一松先生がこのベッドを使っているのかが手に取るようにわかるようで、すごく怖い。

にしてもなんだこの寝顔。可愛くないか。
そんな考えが頭を過る。
慌てて頭を振って、邪気をとばした。
安らかな寝顔に気を許して、近付いてみる。ちなみにさっきの眠気は吹き飛んだ。
わたしが見ている一松先生の姿は、コーヒーを飲んでいるかわたしを見て目をハートにしているか、……まあだいたい、そんなものだ。だから割と、珍しい姿を見せて貰っている。
「……せんせーはなんでわたしのことが好きなんですか〜……」
寝癖がついた髪を撫でてみる。

「かわいーから」
ふとそんな声が聞こえた。
「……っ!?」
驚いて退けば、一松先生が目を開いた。
「……」
なぜあなたは黙っているのだ。
じーっと見つめられ、さすがに照れてしまい目を逸らす。
「……か、可愛いってどこが……」
「ぜんぶ」
すると一松先生は寝返りをうってわたしに背中を向けた。

「なんでベッドで寝てるの、わたししんどいんですけど!」
聞くべきだった質問を思い出し、ベッドから引きずり下ろそうと試みる。
「添い寝を期待して……」
「気持ち悪っ!」
思わずそう叫べばひひっ……、といつもの笑い声が返ってきた。
しかしまあ、相手は成人男性だ。引きずり下ろせるわけがない。
諦めて他のベッドに移動しようとすれば、一松先生に腕を掴まれた。

「添い寝してくれないの」
「しないから!」

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海柄  - この作品…神すぎます……凄いです!いつ見ても癒されるぅ〜!投稿お疲れ様ですっ!!次の投稿待ってます!ファイトっᕦ(ò_óˇ)ᕤ (2022年4月9日 8時) (レス) @page17 id: c80b266ed1 (このIDを非表示/違反報告)
MATSUNO NANA(プロフ) - もう、続きは書かれないのですか?いや、すみません。気長に待ってます。楽しみにしています! (2021年5月4日 17時) (レス) id: 288501894e (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - ZUNさんは神なのだwさん» 神だなんて……。ありがとうございます! これからも喜んでいただけるよう頑張ります (2019年6月21日 17時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)
ZUNさんは神なのだw - 一松可愛いすぎでしょ!作った人…神じゃん! (2019年6月21日 17時) (レス) id: edb9ce2cd8 (このIDを非表示/違反報告)
小森桃子(プロフ) - 憂月さん» ありがとうございます!私自身も萌えてます(笑) (2019年4月26日 19時) (レス) id: a15aeb4942 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小森桃子 | 作成日時:2019年3月26日 10時

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