引きこもりが愛されてしまった…【文スト】

元引きこもりが３６人。 ページ43

相沢side

「つきましたね！」



一般的な一軒家、ここが被害者の家だ。



大丈夫、大丈夫、最近は少し話せるようになってきたし、賢治くんもいるし。



自己暗示に近いなにかを言い聞かせた。



賢治くんは人差し指をボタンに突きつけ、



ぴーんぽーん、無機質な機械音が外玄関に響く。



『あの、連続誘拐事件について調べている者です。



　お宅のお話を伺うことは可能でしょうか』



ー−−、…、がちゃり。



ドアが開き、一人の女の人が姿を現す。



「鈴のこと…？」



「はい、有田鈴さんのことです！」



『ちょ、』



娘さんがいなくなって傷心しているときに、そんな態度で大丈夫なの？



そう言おうとしたが目の前の女性はその笑顔が何を思わせたのか



力無く笑って私たちを中に入れてくれた。



…一人で心細かったのかな。



だから娘さんと同じくらいの子が来て少しだけ安心したのかも。



「お邪魔します」



『お邪魔します』



賢治くんに続いて中に入る。



中は薄暗くて、「暗くてごめんなさいね」と謝られた。



『いえいえ…、私も少し前までは似たような場所にいたので』



気を遣ったつもりだったのだが



女性もとい鈴さんのお母さんは不思議そうな顔をして、



「そう…？」



とやはり力無く言った。



もっと混乱させちゃった…



だれだか知らない人が聞き込みにきて混乱しているだろうに、



余計な事を言ってしまった…！



せめて、せめて名前と武装探偵社のこと言わないと、



私がわたわたしているのを見越してか、賢治くんは名刺を差し出して、



「紹介が遅れてすみません。



　僕は武装探偵社に務めている宮沢賢治と申します。



　こちらの方は、僕の同僚で、」



『あ、相沢Aと申します』



た、頼りになる…！



そう思ったのと同時に、年下よりも使えない自分を情けなく思った。

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