引きこもりが愛されてしまった…【文スト】

元引きこもりが２７人。 ページ34

相沢side

そし私たちは、いつか太宰さんが私を探偵社へ勧誘した喫茶店にきていた。



『太宰さん、これこの前のお金です！』



そう言って４６０円を手に乗せて太宰さんの前に突き出した。



「ああ、いらないって言ったのに…



　まあ、Aちゃんの好意として受け取るよ」



太宰さんは私の手の中のお金をそっとつかみ、お財布にしまった。



「では、Aちゃん、なに食べる？奢るよ？」



なぜどうも男性は奢ると言い出すのだろう、



なんて考えながらもこちらもご好意に甘えて、



『ありがとうがざいます』といいながらメニュー表を手に取る。



『私、このフレンチトースト食べたいです…！』



「はーい。では私は、んー、…あ、カニグラタンにしようかなぁ。



　すみませーん」



太宰さんは女給さんに声をかける。



美人な女給さんを見て太宰さんが見逃すはずなく、



当然のように心中に誘っている。



『今死なれたら困るんですけど…』



意をそのまま口に出すと、太宰さんは小さい呟きが聞こえていたようで、



「ごめん、華麗な女給さん。やっぱできない」



と言っていた。



女給さんは奇訝そうな顔をして、厨房に戻る。



気まずい謎の沈黙が続く。



数分経つと、机にグラタンとフレンチトーストが置かれた。



わ、美味しそう…！



目が輝く私を見てか、太宰さんはクスッと笑う。



「食べようか」



手を合わせて、いただきますと声を合わせる。



『美味しい…！』



「カニグラタンも美味しいよ、一口食べる？」



『じゃあ、フレンチトーストも食べてみてください！』



カニグラタンも美味しい、フレンチトーストも美味しい、と声が重なる。



顔を見合わせて、笑いあった。



そんなこんなで食事を続けて、食べ終わったあと太宰さんにお支払いをお任せした。



「さ、社に戻ろうか」



『そうですね』



ー−−−
ちなみに社に入ると昼休憩はもう過ぎている、と国木田さんにめっちゃ怒られた。



これからは時間気を付けようと決心した私であった。

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