張本人 ページ48
「ひ!!!日和さん…!?」
「………………殿下。」
鍵がかかっていたはずの部屋の扉がばん!と開いた。
そこには、ステージ衣装のままハアハアと肩を揺らす日和さんの姿。
その後ろに、申し訳なさそうにしているスタッフさんと、心配そうに覗き込むジュンさん、凪砂さん。
「Aちゃん、茨、んもう、心配したんだからねっ…!!」
「殿下。すみません。…………ハア。間が悪い。」
「何か言った?」
「いえ。何も。鍵開けていただきありがとうございます。
…そこにいるスタッフは、”これ”の張本人でしょうか?」
居心地悪そうにしていたスタッフさんが、茨さんに睨みをきかされ縮こまっていく。
「も、申し訳ありません!!自分の、確認不足で、大事な時期におふたりをっ…………」
「茨。そんなに怒らないであげて。確かに確認を怠って2人を閉じ込めてしまったけれど…彼が一生懸命仕事してくれていたのは事実なんだ。」
「ですが閣下。自分だけではなくAさんも巻き込まれているのです。
直後に何もなかったから良いものの、これが開演直前だったら大惨事であります。彼にはしっかり後で指導させていただきますからね。」
縮み上がるスタッフさんにかまわず早口でまくし立てた茨さんは、はあ。と立ち上がり、私に手を出す。
「立ち上がれますか?」
「あ、ありがとうございます」
私はその手を掴みゆっくりと立ち上がる。
茨さんはそのままキッ!とスタッフを睨みつつ部屋から出た。
あまりにも小さくなってしまったスタッフさんに思わず、だ、大丈夫ですからね。お疲れ様です。と声をかけた。
はぃ………申し訳…ありません…と蚊の鳴くような声で返事をし、うっすら私を見つめたかと思えば、すぐに目を逸らされてしまった。
「自分はそのまま残った仕事をします。閣下、殿下、ジュン、3人は明日に向けて休んでください。」
「茨、大丈夫なんですかぁ〜?」
「リハは全て終わっているため、残りは自分の確認事項だけです。問題ありません。」
「はぁ、そっすか……」
心配そうな顔の3人を横目にツカツカと楽屋の方へ向かっていく。
「Aさん、自分はこれから着替えて荷物をまとめてESに戻ります。まだこの現場で仕事は残っていますか?」
「いえ、明日でも大丈夫なやつです………」
「左様ですか。では、自分とESに戻りましょう。」
「は、はひ」
茨さんはまたツカツカと歩いていく。
…………私の手は、握ったまんまだ。
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斉藤ちく(プロフ) - ちびさん» コメントありがとうございます。とても励みになります!細々とですが続けていきたいです。ちび様もご自愛ください! (6月9日 19時) (レス) id: 43e5963b91 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく拝読しています。展開もドキドキワクワクで…とても楽しみにしております。雨が多く、ジメジメする時期ですが…ご自愛ください。これからも応援しています☆ (6月9日 7時) (レス) id: 190d57c004 (このIDを非表示/違反報告)
斉藤ちく(プロフ) - あめみやさん» コメントありがとうございます。ツンデレ茨からしか摂取できない栄養、ありますよね…。 (6月8日 14時) (レス) id: 771595aedb (このIDを非表示/違反報告)
あめみや(プロフ) - ツンデレな茨もまた良き (6月5日 22時) (レス) @page37 id: a179dcb416 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:斉藤ちく | 作成日時:2023年5月4日 18時