迷惑 ページ33
手当てが終わり、茨さんは私から静かに手を離した。
そのまま救急箱の片付けをしてる様子を横目に、ゆっくり立ちあがり膝の確認。
………うん、大丈夫、そう…。
「すみません、朝からご迷惑おかけして…」
「とんでもない。従業員の健康管理こそ、責任者の勤めですからね。」
傷の手当は健康管理に入るのだろうか。という野暮なツッコミは喉の奥にしまった。
「………えと、今日の朝のミーティング……時間すぎちゃいましたけど、開始しますか?」
「そうですね。では先日お渡しした資料と、昨日撮った写真のデータをお願いします。」
パラパラと準備を進めていく。
ノートPCを出して、ドライブを開いて…あ、あと写真選定時に参考にしたデザインの印刷物………………
________ぐらり。
「…………………っ…」
「……どうしました?」
また、ふらついた。
目の前がぐにゃりと曲がって、頭が急に重くなる。
そのままゴツンと床に頭蓋骨を落としそうになる感覚。
「……っいえ、なんでも…」
持ち直した私を見て、怪訝な表情をする茨さん。
「なんでもないわけないだろ」と言わんばかりに、眉間にシワがよっている……。
「…体調が優れないのでしょうか?」
「いえ、ほんとに、ほんとに大丈夫です。これ以上ご迷惑は………」
「無理されてぶっ倒れた方が迷惑ですが」
………ご最も。
それを言われて、何も言えなくなってしまった。
「今日のミーティングはリスケしましょう。大して今後のスケジュールに響くような内容ではなかったはずです……………あなたには、これを。」
「………………?」
カラリ、と、茨さんは私の手のひらにカードのようなの何かを置いた。
「これは…ルームキー、ですか」
「ええ、ESの仮眠室です。カードにフロアとルーム番号が記載されているので、そこで午前中は休んでください。」
「か、仮眠室って……………で、でも私まだ仕事……」
「貴方が倒れたら、それを補うための人員、工数、諸々の作業が発生します。貴方は今回のプロジェクトの中枢人物です。ここまで言って、まだ分からないのであれば貴方を採用した自分のミスです。わかりますか?」
「…………」
茨さんの瞳に、圧倒され、
申し訳、ありません。と頭を下げ、副所長室をあとにした。
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斉藤ちく(プロフ) - ちびさん» コメントありがとうございます。とても励みになります!細々とですが続けていきたいです。ちび様もご自愛ください! (6月9日 19時) (レス) id: 43e5963b91 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく拝読しています。展開もドキドキワクワクで…とても楽しみにしております。雨が多く、ジメジメする時期ですが…ご自愛ください。これからも応援しています☆ (6月9日 7時) (レス) id: 190d57c004 (このIDを非表示/違反報告)
斉藤ちく(プロフ) - あめみやさん» コメントありがとうございます。ツンデレ茨からしか摂取できない栄養、ありますよね…。 (6月8日 14時) (レス) id: 771595aedb (このIDを非表示/違反報告)
あめみや(プロフ) - ツンデレな茨もまた良き (6月5日 22時) (レス) @page37 id: a179dcb416 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:斉藤ちく | 作成日時:2023年5月4日 18時