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コーヒー ページ12

「忘れ物はこれですか?」


「あ」


七種さんが右手に持っていたのは、私が忘れた今日の資料。
きっちりファイルに入れ直してある。


「すみません…それです。ありがとうございます。」

「今後は気をつけてくださいね。機密情報も扱ったりする可能性、ありますから。」

「はい……申し訳…ありません…。」



情けない………と項垂れていたら、少し時間を置いて、目の前に香ばしいコーヒーの香りが漂ってきた。
見ると、七種さんがコーヒーの2杯目をセットしていた。


「……七種さん、よくコーヒー飲むんですか?」

「…………………これは貴方の分です。コーヒーお嫌いでしたか?」


「……え…」



自分の2杯目かと思いこんでいたけど、私の分…………だったんだ。
もしかして、気をつかって…



「そんな疲れた顔をされると、社員全員の雰囲気も下がりますからね!責任者として、です」

「は、はあ……」



そんなことはなかった。なんだ…。まあ、そうか………。



できあがったコーヒーを受け取り、七種さんが座っている斜め前に座り、少し飲む。

体が芯から温まって、色々な部分がほぐれていく感覚。

……あったかい。



「………………まあ、慣れない環境で、殿下にも連れ回されてましたしね。無理もないでしょう。
3人には自分から言っておきますので、少しだけ休憩していかれては?」


「…………

……それも…責任者として、でしょうか。」



「まあ、そうですね。」


「そうですか。」




さっきと言われたことはほとんど意味が同じだけど、
でも、なんとなく…さっきよりも言葉が暖かいのを感じ、また私はコーヒーをひとくち飲んだ。

張り詰めていた何かが、だんだんと緩んでいく。


沈黙。
でも、なんだか落ち着く。


七種さんも、自分のスマホを確認しながら、それでもそばに居てくれている。

まあ、これから同じところに向かうから、ついでに居てくれてるだけなんだろうけど。



「ありがとうございます、もう大丈夫です。ご馳走様でした。」


「左様で。自分もメールを返し終わったので、向かいましょう。タクシーを手配しておきます。」


「何から何まで…すみません」


「………責任者、なのでね。」


そういってメガネのブリッジをくい、と上げ、私の持っていた紙コップを何も言わず受け取りゴミ箱に入れる。

し、紳士。



「? 行きますよ」


「あ、は、はい!」

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斉藤ちく(プロフ) - ちびさん» コメントありがとうございます。とても励みになります!細々とですが続けていきたいです。ちび様もご自愛ください! (6月9日 19時) (レス) id: 43e5963b91 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく拝読しています。展開もドキドキワクワクで…とても楽しみにしております。雨が多く、ジメジメする時期ですが…ご自愛ください。これからも応援しています☆ (6月9日 7時) (レス) id: 190d57c004 (このIDを非表示/違反報告)
斉藤ちく(プロフ) - あめみやさん» コメントありがとうございます。ツンデレ茨からしか摂取できない栄養、ありますよね…。 (6月8日 14時) (レス) id: 771595aedb (このIDを非表示/違反報告)
あめみや(プロフ) - ツンデレな茨もまた良き (6月5日 22時) (レス) @page37 id: a179dcb416 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:斉藤ちく | 作成日時:2023年5月4日 18時

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