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「靴、あとどれぐらいで届くかな」
「あと一時間ぐらいじゃねぇか? まぁ、ゆっくりしてろよ」
アイビーは靴を受け取ったらすぐこの部屋を出ていくつもりらしい。ソファーに座ったアイビーはどこか居住まいが悪そうで、仕切りに時計を気にしている。そんなに切羽詰まっているのだろうか、キバナは疑問に思いながら、二人分の氷入りのグラス、そしてウォッカとコーラの瓶をソファーの前のコーヒーテーブルに置く。
「久しぶりに会ったんだ、乾杯しようぜ?」
「あんまり、そういう気分じゃないんだけれど……」
「いいじゃねぇか。どうせこれから数ヶ月は、行方を眩ますんだろ? なら一杯ぐらい乾杯しようぜ」
キバナは言いながら、酒をグラスに注ぎコーラでそれを割る。安い酒を安いコーラで割った酒が、特級品のワインよりもアイビーの好みであることをキバナは知っていた。『“気品ある味”より“ジャンクな味”のほうがボクには合っている』と、ワインを勧められた際断っていたのをキバナは見たことがあるからだ。
アイビーは背が低い。150cm程しか無いと聞いた。キバナが195cmという長身だからよりそう感じるだけかもしれないが、隣に立つとその小ささが露骨になる。胴体より足の方が長いから、ソファーに座るとより小さく見える。椅子に腰掛けても、アイビーはキバナを見上げることになるのだ。本人は背の低さを気にしているようだから口には出さないが、醸し出す雰囲気は小動物感が否めない。
アイビーはテーブルの上の二つのコップを一瞥してから、片方を手に取る。キバナがもう片方を手に取れば、グラスをカンと触れ合わせ乾杯した。そして一口、酒を飲む。
「——もしさ、オレがこの酒に毒を入れてたらどうする?」
キバナは、ポツリとそう問い掛けた。アイビーはなんてことない顔で、「まさか」と返す。
「酒は同じ酒瓶から注がれた。ボクの酒に毒が入っていたなら、キミの酒にも毒が入っていることになる。グラスに毒を仕込んでいたとしても、グラスはボクが選んだ。グラスの毒が自分に来る可能性は2分の1だ。そもそも毒殺なんてリスキーなことをキミがする必要が無い。ボクに恨みがある人間を適当に焚き付けてボクを殺させればいいんだ。キミが毒を混入するなんてリスクを負う意味が無い。……急にどうして?」
アイビーはキバナの言葉を否定してから、何故そんな問い掛けをしたのかを尋ねた。キバナは彼女の言葉に笑ってから、言葉を続ける。
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作者名:綿雲しぃぷ | 作成日時:2023年6月27日 19時