悪夢と踊る昼と夜 ページ33
眠ると、俺の名前を呼ぶあいつの声が暗い空間に響き、バラバラになったあいつが目の前に現れる。
バラバラになったあいつは、美しく、何かを訴えたいかのような輝きを放つだけで何も言おうとはしない。それが本当に嫌で。
＿特に、あいつの目が嫌だ。助けを求めてくるようにも俺を憎んでいるようにも見える青い目が。
「…あいつはそんな事、思う事も無いとはわかっているんだけどなぁ。」
最後に、諦めたかのように瞼を閉じたあいつを思い出す度胸が締め付けられる。
そして、この世界を許せなくなるのだ。
あいつに希望を持たせることができなかったこの世界を。
「あいつはこの世界で生きるには優しすぎた、本当に馬鹿らしい。」
自分よりも他人を優先する姿勢が本当に大っ嫌いで、同時に、そこがあいつのいい所でもあり俺の好きな所でもあった。
『* **だ。』
刹那。俺の名前を呼ぶ以外のあいつの声が耳に入ってくる。
目を丸くしたと同時に、膝を真っ黒い地に付けた。
「……お前は、お前は本当に。馬鹿野郎でクソ野郎だな。」
＿＿＿
目を開くと、ダイヤの顔がすぐ近くにあり、驚いて飛び起きる。
幸いダイヤは直前に俺の顔を躱し、当たって砕けることは無かった。
「アマゾナイトは硬度6だから僕に当たったら砕けるところだったわよ。これからは気を付けましょうね。」
微笑みながらダイヤは言う。
「……起きて早々注意されてるのか俺は。」
頭を抱えながら俺は言った。
＿それにしても妙に頭が痛い、この頭の痛さは寝過ぎた時のものに良く似ている。
というか完全に一緒だ。
「なぁダイヤ。俺、どれくらい寝てた。」
眉を歪めて言う。
そこであいつの声が、何故か今脳内に響いて更に頭痛が酷くなる。もう一眠りしたい気分だ。
「えーっと、丸2日？」
目を丸くする、言葉が出ない。
俺は身体を破損した覚えも特に無い。何故それほど眠っていたのだろう。
「なんでそんな…寝て…。」
「起こそうとしても魘されてて、起こすのもあれだったから。そのまま放置してたら2日経ってたのよ。」
いつも通りの能天気スマイルでダイヤは言う。
あの幻覚を、丸2日も見ていたのか。
考えると拷問に近いような仕打ちだな、と思って大きなため息を吐いた。
「あー、何か変わった事は…？」
聞くと、ダイヤの顔がわかり易く変わる。
誰か連れ去られでもしたのだろうか。
それだったら、あいつが悲しむだろうから嫌だな。
「……フォスの頭だけが、月に。」
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作者名：兀 | 作成日時：2018年6月3日 20時
