短い出会い ページ18
「先生。」
いつも通り、外へと視線を向けている先生へと声をかける。
声をかければ、こちらに気付き、ゆっくりとこちらへ顔を向けた。
「ああ、クリソコラ。」
低い声が、耳に纏わり付く。
「仕事の内容を聞きに来ました。」
宝石達なら大丈夫なのだが、先生の目を真っ直ぐ見て話すのは苦手だ。
何かを、見透かされているような気がしていつまでやっても慣れない。
考えすぎなのだろうが直せないのだから仕方がない、と俺の中で完結させている。
「まだお前と組むのに最適な者は見つかっていない。しばらく個人での見回りは大丈夫だろうか。」
個人なら周りの眼を気にせずに戦える、そっちの方が気楽で実力も発揮できるため不便なところはいなだろう。
恐らく、だが。
「大丈夫です。」
先生の纏う雰囲気が穏やかなものに変わる。
いつもこんな雰囲気を纏っていたら、楽なのだが。
「ではよろしく頼む、今日は緒の丘を。」
はい、そう返しては先生の所を後にし、緒の丘へと向かい始めた。
「そうか、ここは……。」
ここは俺達が生まれた場所だ。
俺はここで、確か一番最初に見つけたのは青緑だとか言ってたな。
なんだか懐かしい気持ちになって、柔らかい笑みが零れる。
＿無意識に、首元に手が伸びた。
ザラザラした個所に指を当てる、このアマゾナイトもここで拾われたのだったか。
なりそこない、なんだか、妙な響きだ。
「あー……眠くなってきた。冬のツケが来たか。」
眠気に逆らえず、瞼がどんどん閉じていく。
月人が来て攫われても、何も悪い事はないだろう、その時はその時だ。
＿＿
「ったく、こんな所で寝んなってクリソ。」
聞いたことのない声が耳元で聞こえ、瞼を開く。
そこには空青色の、またまた見たことがない宝石が居た。
髪はダイヤの髪が少し伸びたくらいで、目はつり目。服装は完全に俺と一緒だ。
「だ、れだお前。」
腰に手を当て、すぐにハサミを取り出せる準備をする。
「この色、見覚えないのか？ アマゾナイトだよアマゾナイト。」
は？、あまりの驚きにそう腑抜けた声が漏れた。
つまりルチルが言った事は全て本当だったという事か。
頭痛が酷い、全く理解ができない。
「暇だったからお前の夢の中に出てみましたー！ ってね。」
無邪気な笑みをアマゾナイトは浮かべる。
まるで、子供のようだ。
「まぁもうそろそろ覚めるみたいだけどな。ほら、お迎え来てるぞ。」
光が、差し込んできた。
別れだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：兀 | 作成日時：2018年6月3日 20時
