3『過呼吸』 ページ3
「一年生はまだ、リズム打ち出来ていない所があるから」
今年、変わったばかりの顧問の先生が言った。
どうやら、一年生だけ、別室の方で練習するみたいだった。
その言葉に酷く安心した。
先輩の顔を見ることさえ、出来なくなっていた。
「Bの、61からいける?」
「「はい」」
同級生達だけで練習する時間は、一番楽しくて、心が安らいだ。
皆んな、私より強いメンタルを持っているのか、この前言われた事を気にせず頑張っていた。
一方、私は、この前の言葉が刺さっていて、歌えなくなっていった。
置いてかれる、先輩達だけじゃなく、同級生にも。
背中に冷や汗が伝った。
涙が出そうだった。
置いてかれる置いてかれる置いてかれる
頭の中で、それがずっとリピートされた。
____リズムも合ってないし、音程も……
先輩の声が聞こえた気がした。
私だけ、合ってない、私だけ、私だけ。
どうしようもない、劣等感が私を襲った。
ふと、目に映った歌詞が。
先輩に特にダメ出しされた所だった。
ひゅっひゅっひゅっ。
大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫。
息をしろ、深呼吸深呼吸。
いつのまにか、私は自分の手で、自分の首を絞めていた。
ちゃんと、ちゃんと呼吸を。
いつも通りに、酸素を供給して。
「はっはっはぁっ!!」
____なんでなんだろう。
呼吸が出来ないんだ。
息を、空気を吸い込んでいるのに。
呼吸の代わりに涙が出て。
「大丈夫!?早く保健室の先生を!!」
皆んなの顔が、心配してる顔が。
先輩の顔に見えた。
ああ、一人の時は聞こえなかった、メトロノームの音が。
私を追い込むように、早く鳴っていた。
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。
ただ。ただ。
私は楽しく歌いたかった。
「が、はっ、はっぁ、はっはっ」
涙が溢れでるばかりで、皆んなに置いていかれるばかりで。
歌が怖くなっていくばかりで。
ちっとも、上達しない。
こんな自分に、嫌気がさした。
でも、やっぱり呼吸が出来なかった。
先輩の声がずっと、耳に残っていた。
先輩の歌がずっと、耳に残っていた。
私は過呼吸に陥っていた。
でも、そんな事どうでも良かった。
先輩に会わずに、どう帰るか、ずっと考えていた。
それ程、私は先輩がトラウマだった。
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みのみの(プロフ) - ゆっくりね。 (2019年8月20日 21時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
白波心(プロフ) - みのみのさん» そうですね。頑張らなくてもいいんですよね。ありがとう。アーヤは本当に優しいです。これからも優しく接してくれます。それで後々問題が起こるけれど……貴方にコメント貰えて、少し肩の力を抜いてみようと思いました。 (2019年8月20日 21時) (レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
みのみの(プロフ) - 思い出せてよかったね。頑張っていきしようとすると、もっと苦しくなっちゃうよ。辛い時は、学校休んでもいいんだよ。辛い、苦しい、そんな時は、ズル休みなんかじゃないのよ。アーヤは、優しいね。 (2019年8月20日 19時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
白波心(プロフ) - みのみのさん» ありがとう。なんて言ったらいいのか、口下手だから分からないけれど、ありがとうございます。腹式呼吸……久し振りにやりました。思い出させてくれて、ありがとう。 (2019年8月20日 18時) (レス) id: 4a6ed9dad0 (このIDを非表示/違反報告)
みのみの(プロフ) - 息を吸って、お腹にためて、ゆっくり吐き出したら落ち着くょ。腹式呼吸っていうんだ。よかったら、調べてみてね。我慢はしないで、泣きたいときに、泣いてもいいよ。 (2019年8月20日 17時) (レス) id: 8f8d558b6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白波心 | 作成日時:2019年7月10日 23時