過呼吸多発症【探偵チームKZ】

４『惨め』 ページ4

「そうですか……ご迷惑をお掛けしました」



私は部活を早退し、家の自室で楽譜を開いていた。


母が私の担任と話してる声がする。
受話器の音ですら耳障りだった。


楽譜に書き込まれた文字も、付箋も、折り目でさえ。
見る度に何とも言えない劣等感と、八つ当たりの様な怒りが込み上がる。

蛍光ペンで線を引いた歌詞が、今は憎くて堪らない。


「A、夕飯何がいい？」


階段を駆け上がり、ドアの前で母が言う。

その声ですら、うるさくて堪らなくて。
現在進行形で、私を育ててくれている母親に、怒鳴った。

「うるさい！！うるさいうるさい！！！黙れ！！」


母は何も悪くない。
悪いのは全て私。

メンタルが脆い、弱い、私のせい。


「……っ、る、さい」


違う違うの。私こんな事言いたいわけじゃない。
皆んなみたいに、歌いたいだけなの。

「ごめっ、なさ……ぁっ」


出てきた涙でさえ、今は申し訳なかった。
母は、静かに階段を下りていった。

きっと、呆れられたんだろうな。


馬鹿だなぁ、馬鹿だよなぁ私。


惨めで、弱くて、歌すら出来ない。

「も、う、やだなぁ」


頑張れば頑張るほど、自分の首が絞まっていく。


先輩の言葉なんか、聞き流しちゃえばよかったのに。

それが出来たら苦労しないんだけどさ。

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