【あんスタ】冗談抜きで好き【羽風薫】 (ページ6)

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海月ページ6

潮風が頬を撫でる午後8時。
俺たちはやっと、コンテナから出てきた。

「怖かった？」
「いや、ひゃかぜ殿は必ず来てくれると
信じて待っていたのでな、怖くはなかった」
「……もう、嘘吐きなんだから。
俺に嘘吐いてもすぐわかるから、やめた方がいいよ？」

震えている手、声、それから八の字の眉で笑って。
バレバレなのに、どうして君は嘘を吐くんだろう。
心配かけたくない？
それとも、もっと他の理由？
ぱしゃん、と海水に足を踏み入れた彼女を
後ろから抱きしめる。

「このまま海月になれたら素敵なのに」
「どうして？」
「泣いててもわからないでしょう？」

ぼろぼろ、ぼろぼろ。
ぽたぽた、ぱしゃん。
涙は頬を伝って海水に混ざる。
うあああ、と幼子のように大声で泣く君は、
やっぱりとても美しくて。

ある程度君が落ち着いたところで、
零れた涙にキスをする。

「怖かったでしょ、まだ泣いてていいよ」
「う……っく、かおる、かおるっ……！」
「よしよし、大丈夫だよ。
大きく息を吸って……吐いて……上手上手」

ぱしゃん。

彼女が海水を蹴る。
「あのね」
「ん？」
「かおるの彼女で、婚約者で、幸せだよ」
「俺も幸せだよ」
「何があっても、桔梗はかおるが好き」
「嬉しいなぁ」

亀裂だってヒビだって入らない、
この強固な愛に名前をつけるならば。

「挙式、いつにしようか」
「ひゃい！？」
「きょ、し、き。いつがいい？」
「きょし、んんっ……挙式、って」
「ああ、結婚式のことだよ？」
「そ、それは知って……！！」

ぐら。
足裏で海水を叩いた君がバランスを崩す。
ってあれ、なんで俺までバランス崩してるの？
とりあえず、君を抱きしめて体を反転させる。

ばしゃっ……！

「ごめっ、服引っ張っちゃった……！」
「慌てすぎ」
「か、かおるが挙式とか言うから！」
「せっかく俺が下にいるのに、
くっついたら濡れちゃうよ？」
「実はもう半分くらい濡れてる」
「あれ？」

うーん、飛沫まではわからなかった。
あはは、と君を抱きしめたまま笑うと、
君は唸りながら頭を擦り付けてきた。

「うー、じゃなくて。起き上がらない？」
「やだ」
「濡らしてあげようか？」
「涼しい……」
「まったく」

このまま溺れたら、竜宮城まで行けるかな。
行けたら竜宮城で式にしよう。
無邪気に俺の上で笑う君は、
やっぱり愛おしかった。