従兄弟 ページ32
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___アフリカ 五条悟・海外出張時
『そうだ聞いてよ憂太。一年にね、凄い泣き虫な天才くんが入って来たんだよ』
『泣き虫な天才くん、ですか』
『そう。子供みたいにすぐ泣いちゃうんだけどね、ホントに頭の良い子なんだ。中学の間の全国模試、全部トップ5に入ってんの』
『えぇ!?』
それを聞いた乙骨は分かりやすく驚いた顔で五条を見上げる。
砂混じりの乾いた風を受けながら、五条は楽しそうに頷いた。
術式が分かれば絵と色彩の勉強を始める。銃を貰えば早撃ちを百発百中になるまで練習する。
そんな子なのだと五条は嬉々として語った。
『マルチタスクが得意な子でさ、電話しながらバカ難しい数学やら現文やらの問題スラスラ解いたりしちゃうの』
『それは凄いですね…!あっ、でも僕、従兄弟にそういう子いるんですよ』
『へえ?』
自分の知っている世界など狭いものだなと眉を上げて見下ろす五条に、乙骨は得意げに応えた。
『Aっていう子なんですけど、』
『えっ?』
『ん?』
長い長い脚がその歩みを止め、ポカンとする生徒を見下ろして固まる。
乙骨は何か変な事を言ったろうかとオロオロし始め、漸く膠着状態が解けたかと思えば次に出てきたのは大声で。
『えぇええぇえ!!?待って憂太、氏名言って!氏名!』
『え?えっ?確か今は一色Aくんって言うんですけど…』
『嘘でしょ!?僕の世界ホントに狭いよ!狭すぎるよ!その子だよ僕の言ってる天才くん!』
『ぇええぇえーーっ!!?』
凡そ28歳とは思えない言動を取る自分の担任を目の前に、乙骨までもがただ驚くしかない様子で大声を出す。
暫くまた戸惑いの声だけで膠着し、次にそれが解けた時には五条が半ば身を乗り出していた。
『よし聞こう。聞いちゃおう。憂太、Aってどんな子?』
『どんな子…?えぇっと、忘れちゃったけど元は苗字が違ったんですよね。それで、えっと、住む世界が違うって言うか何て言うか…』
そうして語られた乙骨のAに対する印象は、五条を困惑させるのに十分な内容だった。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時