代わり ページ35
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「狗巻先輩！」
呪言で止めて、攻撃して。
それを繰り返して今進んでいるけど、恐らくこの均衡が崩れるのはそう先の話じゃない。
増して先生方の誰とも連絡が取れていないこの状況は余りにも危機的すぎる。
マガジンを交換しながら先輩に声を掛けると、切羽詰まった様子の顔貌がこちらを向いた。
「もう呪言、乱発出来ないですよね？」
「じゃ、け…ッ」
「俺が…っ俺が代わりを担います」
「！」
先輩は驚いた様子だったけれど少し考える素振りを見せつつ頷いてくれ、俺は一度銃を下ろしてマルチタスクの準備をした。
倒すのはどう考えても無理だ。少しでも呪霊の動きが鈍くなれば今はそれで良い。
ーー体を、重くする
鉛のように重くて体が動かないんだと自分の脳に
来るぞ！と加茂さんの声が聞こえて振り返り、同時に瞼を開いた。
「！？」
「一色！」
「長くは持たない！早く！！」
眼球の粘膜が乾いていくのを感じながら振り返って走り出す。
どの程度持つか分からない。早く早く早く
「五条先生…っ！」
＊
広い瓦屋根の上、4人と呪霊1体が対峙する。
朱色の翼を持つ式神、鵺が伏黒にくしゃりと毛並みを撫でられて飛び出した。
と同時に、それまで目を閉じていたAが瞼を上げる。
「ッつ…！」
「！」
「加茂さんっ！」
鵺は無事だったものの、Aが突然目の痛みに襲われて瞼を下ろした事で呪霊がまた立ち上がり、重い一撃によって加茂の体が宙を舞った。
「生きてますか！加茂さん！！」
「クッソ…！」
「こんぶっ、高菜！」
生理的な涙によって滲む視界の中、何とか目を開けるAの体を狗巻が支える。
膠着状態が続く中、微かに震える手をゆっくりと持ち上げる伏黒の肩に、狗巻の手がポンと置かれた。
「高菜」
「狗巻先輩！」
「それ以上はっ…」
自由に見えない視界の中で呪霊をきつく睨み上げるAの前で、狗巻の口が音を形作った。
「��ぶっとべ��」
途端に崩れ落ちる体と、背後の瓦屋根へ文字通りぶっとんで行く呪霊と。
咄嗟に走り出して狗巻の体を支えたAと伏黒の前で、呪霊がまた、動き出そうとしていた。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2021年4月29日 19時
