恋10 氷鷹北斗side ページ11
収録後、木南さんに話しかけられた俺。
「氷鷹さん」
「?なんですか?」
そう言うとにこりと微笑んで言った。
「貴方のことすごいと思って…」
「…いえ、俺はアイドルとしても演技もまだ全然で…」
「だからですよ」
その言葉を俺は理解できず「何がでしょう?」と聞き返す。
「ご両親があんなに大物でしたらそれなりのプレッシャーを抱えてるでしょう?」
そうだ、俺は両親のようにならなければと思っていた。
父のような立派なアイドルに。母のように演技も…。
氷鷹の苗字がそうさせていた。
「でも私思うんです、貴方は貴方、ご両親はご両親」
その言葉を聴いただけでは俺は当たり前だと思った。
だが次の言葉で俺は驚かずにはいれなかった。
「貴方は貴方らしく、一人の人間として貴方にしかなれない貴方になればいいんです」
そのあとに一層優しく微笑んで言ってくれた。
「ご両親のようにならなくたっていい、だって貴方はTrickstarの氷鷹北斗さんですから」
そう言うと会釈して別のところに行った。
その時俺は胸の高鳴りを感じた。
氷鷹の息子ではなく氷鷹北斗を認識してくれた。
今までそんな人、俺をよく知っている人以外にいなかった。
…いやまぁ、ファンは別だが。
この業界では俺の名前を聴いたら「氷鷹誠矢の息子」
そう思われるのが普通だっただろう。
共演したことがある人なら尚更。
木南さんは父と共演したことがあるはずだ。
小さいころ言われた。
「ほっちゃんと同い年の木南Aちゃんという子とお仕事した」と。
俺がこの胸の高鳴りの正体の知るのはまだ少し先の話。
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作者名:歌菜子 | 作成日時:2020年4月27日 16時