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イビト山 ページ3

〈Frisk side〉

肺が痛い。息が苦しい。

でも、止まるわけにはいかない。

捕まったら殺される。

あんなやつらに殺されるくらいなら、自分で死んだほうがマシだ。

私はただ、走る。止まらずに。

目眩がしてきたが、気にしない。

止まるわけにはいかない。


…頭が痛い。


─なんで目が見えないのに俺たちのことわかるんだよ。
 化け物みたいだ、気持ち悪い。


いやだ。


─こっちに来んなよ、モンスター!


聞きたくない。


私は、私は人間なのに。

なんでこんなこと言われなきゃいけないんだろう。

ただちょっと他の人とちがう、それだけなのに。

どうしようもない怒りを胸に押し込めて、走る。

息が切れても止まらない。ただ走るんだ。



──そう、あの山へ…。



「ああクソ、これ以上進んだら戻れなくなっちまう!あのガキが‼」


痛い、痛い。

転んだ。膝を擦りむいたんだろう。

ズキズキと痛む。

走りすぎたんだろうか。心臓がやけにうるさい。

音が聞こえない。

…微かに風を感じる。

少しだけ前が開けている。

このまま風を便りに進もう。



…なんとなく、風に導かれているような気がする。



…暗くなった、と思う。

肌を焼く紫外線がなくなった。

見えないけれど、コツン、と響く足音は、ここが洞窟だと教えてくれた。

…いつの間にか心臓が落ち着いていた。

反響が聞こえるのなら問題ない。前に進もう。

…広くなってきて、肌に照りつける紫外線が強くなる。

洞窟を抜けたようだ。


…また足を引っ掻けて転んだ。

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作者名:葉月色葉 | 作成日時:2022年8月1日 21時

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