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「入りなさい。くれぐれも粗相のないようにしろ。大鬼様はお前のわがままに付き合って待っていてくださったのだぞ」
待っていてくださった?
よくもまぁ、そんなことが言えますね、待ちきれなくて1人もう喰ったくせに。
中からは恐ろしい獣のような唸り声をあげる鬼の声が聞こえる。
お父様は私を突き飛ばすようにして、部屋の中に私を入れた。
部屋中に充満する、血と腐った匂い。
突き飛ばされたことで地面に顔を打ち付けた時、冷たい液体が頬にへばりつく。
見なくてもわかる、これは血だ。
「やっと来たか、待たせやがって…よう嬢ちゃん、年の瀬ぶりじゃねぇか」
地を這うような低い声のあとに、機嫌良さそうに口ずさむ不自然な口笛。
腕の時のことを思い出して、身が震え出す。
「お、遅くなりまして、大変申し訳ありませんでした…」
「いやなに、気にすんな。
まァお嬢ちゃん食う前に1匹食っちまったが…」
鬼は下品に笑った。
恐る恐る顔を上げれば、お父様の2倍以上の上背のある、醜い鬼の姿が。
大きな口は私の頭などひと噛みで潰してしまうだろう。
あの腕は私の腕を昆虫の足を千切るみたいに、いとも容易くちぎってみせた。
「さて、嬢ちゃん。
どこから喰って欲しい?希望があれば聴くぜー?」
「ひ、ひと思いに喰ってください…!」
「いーや、待望の長女だからなァ、味わって食わせてもらうぜ」
「そんな…」
「見たところ、嬢ちゃんは特に希望がねぇみたいだからなぁ…」
瞬間。
左足に、燃えるような激痛が走った。
「ぃた、い"た"いッ!!!!」
鬼を見れば、大層美味そうに私の左足を喰らった。
左足に目を移せば、噴き出すように赤が飛び散っている。
「やはり、18の女子は美味いなぁ…死んでいてはいけねぇ、鮮度が落ちる。甘くて瑞々しくて良い。何より、喰う度あがる悲鳴が堪らねぇ」
産んでもらって後悔はない。
スクスクと育ち、何か不便があった訳でも無い。
恋もした。
名前も知らない殿方に。
その方は優しくて、いきなり門扉に括り付けられた手紙にも返事を返してくれるような方。
以前、たまたま外出許可が出て外を歩いていた日。
すれ違う貴方に目を奪われた。
逞しい背中と、陽の光を吸って煌めく白銀の髪。
顔には大きな傷があって、それが人々を怖がらせてるみたいだった。
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メロンパン - 完結おめでとうございます!めっちゃラスト良かったです!お疲れ様です。(*`・ω・)ゞ (2020年2月22日 14時) (レス) id: 783d8186db (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - こんにちは!夢主さんの優しさと不死川さんの優しさが相乗効果してめちゃくちゃ優しいお話で、読んでてとても幸せな気持ちになりました!!これから2人が幸せに暮らしてくれるといいなあ、と、とても思いました(^^)素敵なお話ありがとうございました(о´∀`о) (2020年2月20日 7時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 桃缶さん» コメントありがとうございます!き、綺麗な文章にかけていましたか!!??初めて言われました、とてもとても嬉しいです…!ありがとうございます!これからも精進してまいりますので、何卒よろしくお願いします! (2020年2月17日 20時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
桃缶(プロフ) - 普通に泣きかけて、ビビっちゃいました(笑) 綺麗な文章ですね!文から趣を感じれるなんて久しぶりですこれからも応援してます!! (2020年2月15日 20時) (レス) id: 0e3ac9e584 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - fmika2918さん» 暖かなコメントありがとうございます。今流行りのドロドロ恋愛は書けませんが、とにかく純愛をと意識して書いておりますゆえ、美しいと言っていただけてとても嬉しいです。次回作も頑張ります!ぜひ、見ていってくださいませ。 (2020年2月13日 7時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2020年1月25日 9時