5月の手紙 ページ11
あれからひと月近く経ち、5月になった。
いつも月の初めに結び付けられていたはずの手紙がいつまで経っても見当たらない。
一体何があったのだろう、と心配になり、任務で遠出をしてもなるべく藤の花の家は借りず、家に帰るようにしている。
そうして息を切らして帰っても、待ち望む手紙はいつまで経っても見当たらないものだから、ため息も出てしまう。
いつも、向こうからだ。
向こうから来る手紙を読んで、それに返すように自分も同じところに手紙を括り付ける。
こちら側から動こうにも、動けない。
向こうは俺の事をある程度知っているようだが俺は何一つ知らないのだから。
今更ながらに自分の愚かさに気がついて、尚もため息が出るのだった。
なァ、アンタはどこにいる?
今の俺なら、どんなことからも助けてやれる。
昔のように非力な子供じゃない。
一言、たった一言でいい。
助けてと、ただその一言を俺にくれ。
ただ、その一言で…
【ドンドンドンドンドン!!!!】
突如、屋敷の門が物凄い勢いで叩かれるのを聞いた。
こんな夕暮れ時に、一体誰だ。
刀に手を置きながらも、慎重に門扉に近寄る。
向こう側から聞こえるのは、えらく乱れた息の音。
恐らく女、か?
「だれか、お願いです、はやく、」
先程強く叩いたのが最後の力だったのか、今は弱々しく門扉を叩いて、助けを乞うている。
だれか、だれか、と。
「アンタ誰だァ?生憎俺は知らない人間を屋敷の中に招き入れるほどお人好しじゃねェ、名とここに来た理由を話しなァ」
女は俺の声に気付いて、安心したように息を吐いた。
「平井家の女中、幸村と申します。貴方様に我が主、平井家の長女様を救って頂きたくお伺いしに来ました」
「平井家…?」
平井家と言えばこの辺りでも有名な金持ちの家だ、俺でも知っている。
平井家の屋敷には年中花が咲いていて、いつ訪れてもその美しさに来客全てが魅了されると。
「花屋敷の、平井家かァ?」
「!!えぇ、そうでございます!」
だが、平井家は知っているがその長女様という者は知らない。
大方、そこの跡継ぎか何かだろうが…まて、花屋敷の平井家?
まさか、
「その女はいつもここに手紙を結び付けていた女かァ」
手紙の中ではいつも花の話や、たまに花を彼女は添えていた。
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メロンパン - 完結おめでとうございます!めっちゃラスト良かったです!お疲れ様です。(*`・ω・)ゞ (2020年2月22日 14時) (レス) id: 783d8186db (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - こんにちは!夢主さんの優しさと不死川さんの優しさが相乗効果してめちゃくちゃ優しいお話で、読んでてとても幸せな気持ちになりました!!これから2人が幸せに暮らしてくれるといいなあ、と、とても思いました(^^)素敵なお話ありがとうございました(о´∀`о) (2020年2月20日 7時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 桃缶さん» コメントありがとうございます!き、綺麗な文章にかけていましたか!!??初めて言われました、とてもとても嬉しいです…!ありがとうございます!これからも精進してまいりますので、何卒よろしくお願いします! (2020年2月17日 20時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
桃缶(プロフ) - 普通に泣きかけて、ビビっちゃいました(笑) 綺麗な文章ですね!文から趣を感じれるなんて久しぶりですこれからも応援してます!! (2020年2月15日 20時) (レス) id: 0e3ac9e584 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - fmika2918さん» 暖かなコメントありがとうございます。今流行りのドロドロ恋愛は書けませんが、とにかく純愛をと意識して書いておりますゆえ、美しいと言っていただけてとても嬉しいです。次回作も頑張ります!ぜひ、見ていってくださいませ。 (2020年2月13日 7時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2020年1月25日 9時