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どうしてこうも詳しいのだろうと思っていたが、年中花が咲く花屋敷ならばその理由は簡単だ。
「そうでございます、そうでございます!お願いです、お嬢様をお助け下さい、」
ようやく門扉を開けると、そこに立っていたのは、
「お、おい!!お前それ、」
「私めは良いのです、それよりもお嬢様を、はやく!」
門扉の向こうに立っていた女は、全身血塗れで所々怪我をしているようだ。
左目は潰されているのか、血がとめどなく溢れて開けることは不可能になっている。
平井家からここまではそう近くない、ただの女がこの怪我でここまで走ってこれたことが驚きだ。
「だがそれは放っておくと、」
「お嬢様から、これを預かっております、」
女中は震える手で右手に持っていた一輪の花を俺の胸に押し付けた。
黄色い花には血が飛び散っていて、物事の悲惨さを語る。
しかしそれは、あまりにも見た事のない花で。
「この花は提灯百合、と申します」
花言葉は───────
女中の口から続けられた花言葉に、思わず目を見開いてしまう。
「悪ィ、帰ってきたら必ず手当をする。屋敷の中で待っててくれ」
いても経っても居られなかった。
女中は穏やかな笑みを浮かべ、「良かった」と一言漏らす。
「お嬢さまを、どうか…お救い下さい」
その言葉を皮切りに、幸村という女中はこと切れて眠ってしまった。
それ程までに無理をしたのだ。
俺はその女中を屋敷の布団へ置いて、平井家へ走った。
今、そこで何が起きているのかは分からない。
ただひとつ分かるのは、手紙のアイツがただならぬ状態にあるということだけ。
───────
拝啓、名も知らぬ君へ
俺から出す手紙はこれが多分最初で最後だ。
今まで言うに言い出せなくて言わなかったんだが、実は名も知らぬ君へ、なんて書くのは存外面倒なんだ
だからさ、お前の名前を教えてくれ
お前の言葉で、教えてくれよ
なァ
生きててくれ
敬具
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メロンパン - 完結おめでとうございます!めっちゃラスト良かったです!お疲れ様です。(*`・ω・)ゞ (2020年2月22日 14時) (レス) id: 783d8186db (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - こんにちは!夢主さんの優しさと不死川さんの優しさが相乗効果してめちゃくちゃ優しいお話で、読んでてとても幸せな気持ちになりました!!これから2人が幸せに暮らしてくれるといいなあ、と、とても思いました(^^)素敵なお話ありがとうございました(о´∀`о) (2020年2月20日 7時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 桃缶さん» コメントありがとうございます!き、綺麗な文章にかけていましたか!!??初めて言われました、とてもとても嬉しいです…!ありがとうございます!これからも精進してまいりますので、何卒よろしくお願いします! (2020年2月17日 20時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
桃缶(プロフ) - 普通に泣きかけて、ビビっちゃいました(笑) 綺麗な文章ですね!文から趣を感じれるなんて久しぶりですこれからも応援してます!! (2020年2月15日 20時) (レス) id: 0e3ac9e584 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - fmika2918さん» 暖かなコメントありがとうございます。今流行りのドロドロ恋愛は書けませんが、とにかく純愛をと意識して書いておりますゆえ、美しいと言っていただけてとても嬉しいです。次回作も頑張ります!ぜひ、見ていってくださいませ。 (2020年2月13日 7時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2020年1月25日 9時