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「しなずがわ、さん?」
「なんだァ?」
「確かに、貴方がもっと早くついていれば…私の足は、両の瞳はここにあったかもしれません。」
「ッ、あぁ…」
「なので。貴方には1つ、私の言うことを聞いてもらいます。それで全部チャラにしましょう。」
「一つだァ?ひとつで済むもんじゃねぇだろ、
なんなら腹切って────」
「しなずがわさんがお腹を切っても私の手足は戻ってきません。」
「ぅぐ…」
「それに、とびきり大変なお願いかもしれませんよ?
覚悟はありますか?」
「もちろんだ、なんだってやる」
「じゃあ…お願いです。」
そう言って私はしなずがわさんの声がする方に向かって手を差し出した。
「…金かァ?」
「違います。
ここに、指で漢字を書いてください。
しなずがわ、って漢字でどうかくんですか?
難しくて想像がつかないんです、」
「あァ?!そんなの願いのうちに入らねぇだろうがァ!」
「これが私のお願いなんです。
なんでもするって言いましたよね、書いてください」
しなずがわさんはうっ、と言い淀むと、大きなため息をついて私の手をとった。
大きくてゴツゴツして…暖かい手。
優しい、守る者の手。
…手紙のあなたらしい手。
「しなずがわ…不死川さん。
不死川さんってこういうふうに書くんですね。」
「さっきも言ったがなァ、こんなん願いのうちに入らねぇ、せめてもうひとつくらい言え!これじゃあ俺の腹の虫が収まらねェ!」
「えぇ…それなら、下の名前も教えてください。
また、指で私の手のひらに漢字も。」
「だっ、テメェなァ!」
「不死川さん。おねがい、です」
「!!…くそ、こんなんで済まされるもんじゃねぇだろ…」
ブツブツ言いながらも私の手のひらにゆっくりと文字が書かれていく。
…あぁ、やっぱり。
「…なんで笑ってる」
「ふふ、だって…さねみさんって、」
「女みてぇって言いてぇのか」
「違います。
やっぱり、優しい人には優しい名前がつくんだなぁって」
「…アンタなぁ、ほんとにかなわねぇよ…」
ため息をつかれてしまった。
呆れてしまったのだろうか?
「…は。」
「え?」
「だから、アンタの名前は」
「わたし、私は…」
貴方のように優しい名前でもないけど。
ただ、名前が無いと呼ぶ時にめんどくさいからと適当に付けられた名前だけど。
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メロンパン - 完結おめでとうございます!めっちゃラスト良かったです!お疲れ様です。(*`・ω・)ゞ (2020年2月22日 14時) (レス) id: 783d8186db (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - こんにちは!夢主さんの優しさと不死川さんの優しさが相乗効果してめちゃくちゃ優しいお話で、読んでてとても幸せな気持ちになりました!!これから2人が幸せに暮らしてくれるといいなあ、と、とても思いました(^^)素敵なお話ありがとうございました(о´∀`о) (2020年2月20日 7時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 桃缶さん» コメントありがとうございます!き、綺麗な文章にかけていましたか!!??初めて言われました、とてもとても嬉しいです…!ありがとうございます!これからも精進してまいりますので、何卒よろしくお願いします! (2020年2月17日 20時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
桃缶(プロフ) - 普通に泣きかけて、ビビっちゃいました(笑) 綺麗な文章ですね!文から趣を感じれるなんて久しぶりですこれからも応援してます!! (2020年2月15日 20時) (レス) id: 0e3ac9e584 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - fmika2918さん» 暖かなコメントありがとうございます。今流行りのドロドロ恋愛は書けませんが、とにかく純愛をと意識して書いておりますゆえ、美しいと言っていただけてとても嬉しいです。次回作も頑張ります!ぜひ、見ていってくださいませ。 (2020年2月13日 7時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2020年1月25日 9時