moment〜4 ページ50
心配事が一つある。
キキョウが私の娘だとバレること。
これが一番怖い。
葛城大佐の勘が、そこを嗅ぎつけるまでに鋭くなければ一番良いのだが。
今現在は、友人が亡くなり、その子供を預かり、育てているとそう伝えている。
実際、コズエさんもちょくちょく様子を見に来てくれている。
彼女はキキョウの誕生を、自分のことのように喜んでくれた。
そして私が娘の存在を隠さないといけない理由も、全てわかってくれた。
『死んだ友人の子供として育てる』
この作戦を提案してくれたのは、彼女だった。
きっとツバキはあなたの力になりたがってるはずだから、と。
執務室に戻ると、部屋の奥の読書灯だけが点いていた。
その下で、コズエさんが刺繍をしていた。
応対用のソファでは絵本を片手に眠っているキキョウ。
相変わらず愛らしく、彼に似ている。
「いらしてたんですか。コズエさん。
いつもすみません…」
「あら、Aちゃん帰ったの？
私のことは気にしなくていいのよ。
私が好きで勝手に来てるんだもの。
キィちゃんはあなたの娘だけでなくって私の娘でもあるんだから。」
そう言って、静かに微笑む。
「とても、心強いです。
コズエさん、私あなたのおかげで何度救われたことか」
頭を垂らすと、自然に涙が出てきた。
半ば妹を裏切った女にこれほど尽くしてくれて、本当に感謝の言葉しかない。
「Aちゃん…」
コズエさんは道具を机に置き、私の所に近づく。
肩に手を置き、言う。
「じゃあ、もうこの関係はやめにしましょう。」
「え、どうして…」
「どうもしてないわ。
もう私のことはツバキの姉だとは思わないで頂戴。
これから私はあなたの姉。
あなたは私の妹よ。」
肩を包む手は、小さいけれど暖かかった。
何も言えずただ首を縦にふる事しか出来ない。
これから始まる姉妹という関係に、身体中が火照った。
私がしっかりとツバキの代わりとして務まっているならばいいなと、切に願う。
「姉さん。何の刺繍してたの？」
姉さんは、それは嬉しそうに”桔梗”と言って笑った。
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下弦 - いえいえ、コメント見てくださりありがとうございます。これからも応援しています！！ (2015年11月18日 16時) (
レス) id: e33d5cb0ec (このIDを非表示/違反報告)
紅坂紅子(プロフ) - 下弦さん» コメント有難うございます。こちらのミスでした。修正しましたのでよろしくお願いします。 (2015年11月17日 22時) (レス) id: 9397b1a88e (このIDを非表示/違反報告)
下弦 - すみません、初コメです。私の方がバグっていたら申し訳ないんですけど、28ち29が同じ話になってるんです。少し不安になって。長文失礼しました。これからも頑張ってください。 (2015年11月17日 21時) (レス) id: e33d5cb0ec (このIDを非表示/違反報告)
暗部の桜(プロフ) - とても面白いです。続き待ってます (2015年8月31日 21時) (レス) id: 3141487925 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - もうこの作品大好きです!!ニコニコしながら読ませていただいてます！ (2014年9月14日 10時) (レス) id: 0c3a8a5087 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅坂紅子 | 作成日時：2013年6月12日 21時
