私の前に広がるセカイのその先 ３rd〜緋焔〜

passion〜23 ページ36

驚くのも無理はない。





正直言って、私は皆と同じように、呪縛に苦しむことを望んでいた。





皆と同じ痛みを共有し、悩むことを望んでいた。





でも、7号機は違った。





私をその機体を操る上で巡り会うべき運命に縛りつけなかった。





こうやって老いて一人の母親になる運命を歩ませた。





それは嬉しいことではあった。





一番恐れていたのは、これがバレてモルモットにされること。





監視下に置かれ、あの人に会えなくなること。





隔離されること。





アスカでさえそうするだろうと確信はしていた。





”エヴァの呪縛がない”特異なパイロットは、自由をも奪われる。





この世界は、そういうものだ。





好きにこの身体を抉ればいい。





好きにこの血を抜きまくればいい。





かき回せばいい。どうせ長くもないなら。





「いいことじゃない」




思考を巡らせていると、アスカは唐突にそう言って笑う。





「えっ」





「素敵なことじゃないの。

アンタの母親の置き土産はアンタの事を案じてたのよ、きっと」




「捕らえないの」




「ううん」




「ミサトさ…いや、葛城大佐には」




「言わない」




グズグズ言わないの、とアスカは私の頭を撫でた。




「ありがとう」




私は健やかに眠る娘に目をやった。





「ねえ、A」





「何？」




「私たちの前に現れる前のこと、教えて」




目を見開いた。




「わかった」




そう言って頭を上げる。




このことを話すのなんて、初めてだけど




何だか大丈夫な気がした。

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