8.薄っぺらな嘘 ページ9
ザク…ザク…。
落ち葉の坂道を下って行く。すると前の方に、誰かが蹲っていた。誰でしょう。何も思わずに近付く。
貴『もし、そこの方。どうかしました?』
とんとん、と肩を叩く。
「…あ」
その人は、赤い目とやや長い髪。_加州清光。
貴『貴方は、大広間にいなかった刀剣ですね。私は…』
「あ、ああ知ってるよ。審神者でしょ?」
加州は私の手を取り、立ち上がる。彼はあの本丸の初期刀でしょうか。極とやらには、なっていないようですが。
貴『何故、此処に居られるのですか?』
「あの、その…助けて欲しくて…」
助けて欲しい、とはどういう事なのでしょうか。
首を傾げた。
「俺の、持ち主が一緒の安定が、重症で…」
大和守安定、確か沖田総司という偉人の刀でしたね。
「お願い、安定を助けてくれる?」
わざわざ上目遣い、生憎ながら好きではありません。恐らく前任の仕業でしょう。ため息を付く。
貴『承知致しました…』
人間でないと言うだけで、私はこうも態度が変化するのですね。
.
本丸に着き、また中へ入る。今度は刀剣たちは居ない。隠れているのでしょうか。
「…こっち」
加州に手を引かれ、例の部屋へ向かう。
和式はあまり慣れないですね。何より鴨居が低い。様々な刀派の部屋を通り過ぎた後、やっと加州の部屋へ着いた。
「…この部屋」
彼が手を引こうとした時、ピンッ…と腕が伸びた。
私が立ち止まったんです。
「ど、どうしたの?」
貴『…加州』
_お芝居は終わりです。そう言うと一瞬目を見開き、すぐに戻る。
「何言って…」
貴『本当、この本丸は異常ですよね。空気は淀み、穢れは溜まり、仲間は傷付き…。何もかも…』
天を仰ぐ。所変われば品変わる、とはこういう事なんでしょうか。
加州は慌てた様子で私を引こうとしますが、カンストの彼とは違い、人外の私は力が上なので。
貴『酷い、酷いですよ。前任のせいで、こんなにも変わるだなんて……。貴方方は、審神者を殺すためだけに
ふふふ…。瞬間、目を見開き彼の掴んでいる手をガッと掴み返し引き寄せた。
貴『哀れすぎる。哀れすぎる。利用されていると言うのに、何も感じないのですか?』
前任は、どれ程に酷いものだったのでしょう。本当に、心までも物となって行く様だ。
ザシュッ…。
直後、右横腹に痛みを感じた。これは結構深いです。
「…堀、川…」
「加州さん、ありがとうございます…」
ああ、畜生め。
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小夜 - 面白いです。続き読みたいです! (2020年4月28日 17時) (レス) id: a4e120fc5e (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 面白かったです (2020年2月15日 8時) (レス) id: 7c49b78205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Graecia devil sardine | 作成日時:2019年12月31日 18時