29.歯車は狂い出す ページ30
貴『確かに折られる前の貴方として、また共に暮らしたいと思うでしょう。ですが、燭台切には現実を受け入れてもらいます。妄想から覚まさなくては、彼はずっとあのままです』
貴方が一度折れたと言う事実、そして二振目の太鼓鐘貞宗として再びこの本丸に現れたという真実。
この二つを受け入れさせる、それだけ。
「……」
「…主、もう一振も出来たぞ」
貴『すいませんね』
刀を取り出し、霊力を入れた。
ポンッ!
「ぼくは謙信景光、上杉謙信公がつねにみぢかにおいていた短刀なのだ…ぞ…」
貴『こんにちは』ニコッ
一生懸命に上を見上げる謙信、膝を着き屈み目線を合わせる。顔を見るだけで分かるほど、“でかい”と思われてますね。
貴『私、審神者のAです』
「…審神者、…!!あつき!小豆長光は…!」
「謙信、小豆は大丈夫だ。ただ…」
貴『!!隠れてっ!』
誰かが鍛刀部屋に近付いて来る気配を感じ私は謙信を、鶯丸は太鼓鐘を抱え暗がりに隠れる。
「誰か…居るのかい?」
出入口から出て来たのは、燭台切だった。
「みっちゃ……!?」
鶯丸がすぐに状況を察し、彼の口を抑える。バタバタと暴れる彼の腕を持ち、力を込めて握った。
「そこに…、誰か居るの?」
私たちが隠れている場所は、太陽の日が当たらず暗い死角となっている。見えないのは知っています。
「(来るな来るな来るな来るな来るな来るなっ!)」
「おとうさん」
姿は見えないが、部屋の外で誰かが燭台切に声を掛けてきた。
「どうしたの、小豆」
「はたけのほうで加州と長谷部としらない短刀がおおあばれしている。いそいでとめにいこう」
加州…長谷部…。
「…OK、すぐに行くよ」
小豆長光の気配が遠くなった。
「(おじいちゃん…、あつき)」
「…貞ちゃんも加羅ちゃんも何処に行ったんだろう。あーあ…」
“早く折ってしまいたい”
貴『!』
一瞬、燭台切の声とは他に、重なった誰かの声が聴こえた。聞こえるか聞こえないかの声だったので、私と鶯丸以外は聞き取れなかったようだ。
燭台切が鍛刀部屋から出て、遠くまで行った頃を見合い暗がりから這い出る。
貴『計画変更。太鼓鐘、彼に会うのは危険です』
「なんで!?」
「今ので分かっただろう。今の彼は、貴方の知っている光忠じゃない。恐らく会いに行けば、そのまま折られる」
「いったい…、なにがどういうことなのだ?」
貴『貴方は知らなくていいのです。記憶があるのなら話は早い、ともかく、全てが終われば…』
180人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小夜 - 面白いです。続き読みたいです! (2020年4月28日 17時) (レス) id: a4e120fc5e (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 面白かったです (2020年2月15日 8時) (レス) id: 7c49b78205 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Graecia devil sardine | 作成日時:2019年12月31日 18時