13.殺したくない… ページ14
白山の刃が、心臓を貫く。切り口から出る鮮血が柄まで伝い、ぽたり…ぽたり…と足元に小さな血溜まりを作る。
彼は震え始め、大量の涙が零れていく。その目は恐怖に満ちた目。
貴『おや?おかしいですね。確か私は、大嫌いな“審神者”なんでしょう?』
「何故?私は、私は…兄弟を、折られたのに…」
貴『すごく憎くて、殺したくて、堪らないんでしょう?さぁ…』
「憎いのに…憎いのに…憎いの…」
心ゆくまで、私を刺せばいい。そう思った時、部屋全体に「うわああああ……!!」という声が響く。
それは、白山の悲痛な叫びだった。
「もう嫌だ!…もう嫌だ!私はもう人を殺せない!殺したくない!審神者の悲鳴が、叫び声が、耳に媚びり付いて離れない!目の前で死んだ審神者の姿が、惨状が、目に焼き付いて忘れられない!!」
「は…白山っ」
刀の持ち手から手を離し、頭を抱える。
「でも許せない、誰も失いたくないのに!私はとても愚かだ!対象に、もう憎悪を抱けない。私はもう、皆の役に立てない……」
鳴狐は刀から手を離し、彼を抱き締めた。
「白山、……鳴狐も…出来ない。人…殺せない」
「な…鳴狐…」
ほら見なさい政府、何が危険ですか。
中には居られるじゃないですか、人を殺せないと泣く者たちが。心の底から、助けて欲しいと光を求める者たちが……。
貴『…そうですか。では、_私の手を取って頂けませんか?』
しゃがみ、二振の前に手を差し出す。と、ただ見つめるだけ。
貴『数分前までの私でしたら、さっさと終わらせたいと思っていただけでしょう。ですが急遽変更致しました。私は、全力で皆様をお助けしましょう』
私はカウンセラーではございませんが、貴方方がそれほどまでに追い込まれて居られるならば、私はそれに丁寧に対応致しましょう。
死なない私なりに精一杯の、出来る限りの事を全力で尽くします。
「主、いいのですか…」
貴『ええ、過去に何があろうとそれは過去の事。それに、此処で立ち止まっていては、何もしていないと同様。私にだって一人では突破出来ない事もあります。どうか力をお貸しくだ…』
「A、A!さっきので寝ていた奴らが起きちまった!今三条の奴らが来てる!!」
いい所でしたのに。未だ手を取らない二振と狐二匹を担ぎ脇に抱えて、すぐさま審神者部屋へ。
「主!此処は俺たちが…」
貴『今の彼らの目的は私です。貴方方が相手をしてはなりません!』
共倒れとなればもっと最悪だ。今は逃げなくては。
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小夜 - 面白いです。続き読みたいです! (2020年4月28日 17時) (レス) id: a4e120fc5e (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 面白かったです (2020年2月15日 8時) (レス) id: 7c49b78205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Graecia devil sardine | 作成日時:2019年12月31日 18時