【D.gray-man】 Sorry but Goodbye (ページ36)

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「何もしないで弱いままよりは、頑張っても弱いままのほうが響きがいいじゃないですか」ページ36

「か、カンダ、？…さん！」

そんな名前だったはず、とその広い背中を慌てて追いかけた。
いやぁ怖い怖い。冷汗だらっだら。なんか冷たいものが体中を駆けてるっ。

「…なんだ」

よかった名前間違ってなかった、とこっそり胸を撫でおろし、私は神田さんを見上げた。
その美しすぎるほど整った顔に、目立つほど眉間に刻まれた皺。
怒ってます？とこっちが恐縮してしまった。

「何の用だって聞いてんだ。」
「え、えぇえっと」

怖いっ、なにこの人本当にこわい！
でも勇気を出せ私、出すんだ…。
息を深く吸って吐き、私は改めて神田さんと向き合った。

「あ、あの…リナリーちゃんに、この教団の中では神田さんが一番強いって聞いて…」
「それがなんだ。」

あ、すごい。自負してる。
自分が一番強いって自負してる。

「い、いつも…どんな特訓をしているか聞いてもよろしいでしょうか？」
「…は？」

呆気にとられる神田さんを見て、なんとなくなぜか知らないけど買った気分を味わえた。
何だろう私の今日の思考回路。

「えっとですね…わ、私見ての通りよわっちくてですね、このままだとみんなからどんどん遅れとるなぁと思って…手っ取り早く強くなるのには特訓をと…でも何をすればいいのかわかんなくて…」
「…がむしゃらに特訓したところで強くなれるわけじゃねーだろ」

…あぁ。
そういわれるかも、とは思っていたけど。
小さく、眉を寄せて笑った。

「…わかってます。だけど…」

力を込めて拳を握りしめた。
少しだけ、胸が恥ずかしさと弱さでざわめく。

「何もしないで弱いままよりは、頑張っても弱いままのほうが響きがいいじゃないですか」

へらり、と力ない笑みを浮かべた私は、ゆっくりとお願いしますと口にしながら頭を下げた。

***

「Aさん！」

デジャヴのように名前を呼ばれて、私は振り返った。
黒髪の天使じゃなくて、白髪のイケメンだということ以外大して違いはないが。

「あ、アレンさん！」

…だよね、名前。

「きちんと挨拶できなくてすみません…任務だったもので」
「あ、いえいえ、大丈夫です！」
「僕はアレン・ウォーカーです」
「えっと、私はA・ルーチェです。よろしくお願いします！」

整った口調で微笑みながら答えるアレンさんに、私は先ほど神田さんに聞いた質問を繰り返した。
するとアレンさんはぱちくりと瞳を見開き、私の質問を聞き返した。

「…僕はあまりしてないほうだと思いますよ？」