【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Secondo-

「…そっか」 ページ37

道行く人たちの視線を集めながらダラダラと駅に向かって歩く。
私たっての希望により、飛び乗り乗車はやめにして普通に駅へ向かうことにした。

「へぇ、じゃあ8歳のころにクロス元帥に拾われたんさ？」
「多分ね。 誕生日わかんないから当時の年齢も今の年齢も想定でしかないけど」
「捨てられたなんて、難儀な話だな〜」
「そう？エクソシストの中では普通の話でしょ？」
「まぁ、そうだな。 エクソシストはみんな暗い話持ってなきゃおかしいみたいな暗黙なルールできてそうな感じさ」
「それはないわ」

今はこうやって笑い話に出来るけど、当時は結構辛かったなぁ。
変な気味の悪い両手の文様が浮かび上がったのは、多分6歳前後だったと思う。
ある日唐突に浮かび上がって、病気かといろんな病院に行った記憶だけはぼんやりある。
でも消したい記憶なのか、親の顔だけはどうしても思い出せない。
そりゃあ自分を捨てた人の顔なんて覚えたくもないだろうなぁ。

「…ストリートチャイルドって本当大変だよね」
「いや、俺に同意求められても」
「でも同情だけは絶対にしてほしくないんだよな。 私を可哀想な目で見るなって思う。 同情する、可哀想だって思うってことは「自分は恵まれた環境で楽しく育ってます」っていうことだもん。 腹立たしいわ」
「複雑だなー」

比較的呑気な足取りで駅へ向かう。
途中ですれ違う人たちは誰もが黒いコートと白いフード付きのコートという異様な二人を見るため振り向いた。
一人でならものすごく気になった視線も、今はラビといるから全然気にならない。

「で、私の過去の話はしたんだから今度はラビの話してよ」
「ひ・み・つ」

語尾に音符やハートがつきそうなトーンで、ラビはにんまりと笑った。
その憎たらしい笑みに、私は不満げに眉を寄せる。

「私だけ話すのはアンフェアだと思いませんかラビさん」
「全然思いません！」

まったく動じず、だけどどこか飄々と流すように、ラビは私の質問に答える。
でも私だって、過去を探られたんだから…少しくらい知る権利があってもいいのに。

「ブックマンはいろいろ複雑なんさ」
「え？」
「言えるのはそれだけ」

ごめんな、とラビはまた顔いっぱいに笑みを広げる。
だけどなんとなくわかってしまった。

触れてはいけない話だ。


「…そっか」

言えるのはそれだけだった。

自分が思っている以上に、私はラビのことを知らない。
そしてきっと、これからも知ることはない。

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