「私が行きたいです」なんて、 ページ31
「あ、そうだそうだ、A!」
「はーい!」
名前を呼ばれて、私はコーヒーを淹れていた手を止めて振り返る。
ジョニー君だ。手には分厚い書類を持っている。
しかも、文字ばっかりで見てるだけで頭痛がしそうだ。
「Aってイタリアから来たんだよね?」
「うん、そうですよー?」
「イタリアの地理とかって詳しい?」
その言葉に、ポットをテーブルに置いて少しだけ黙る。
脳内は、イタリアのことをフラッシュバックさせている。
詳しい...って言えるのかな?
「一応人並みには詳しいと思いますけど...どうしました?」
「この資料、イタリアについてみたいでさ、ちょっと助けが欲しいんだけど」
「あれ、イタリアについての本なら書庫にねーか?」
唐突に話に割って入ったリーバーさんに、ジョニー君が振り返る。
いつの間にか周りの人も、ちらちらと聞き耳を立てているようだった。
「いや、分かんないけど貸し出し中なのか何なのかで見つからないんですよ...だから、Aなら知ってるかなって」
「私が手伝える範囲なら手伝いますけど...」
「イタリアの首都ってヴェネツィアだよね?」
「いえ、ローマですけど...」
「うわっ...この資料の上じゃ首都ヴェネツィアって書いてあるんだけど...」
「全然違いますね。 ヴェネツィアは水の都のやつです、北東側に位置してます」
「あれ、じゃあイタリアの靴の踵の方は...」
「酷い呼び名ですねそれ...バリですか?ターラントですか?」
「いや違くて...フィレンツェ?」
「フィレンツェは中部ですよ?...あ、レッチェのことですか?」
「そう、それ!」
長い論争の末、ようやくジョニー君の探していた都市の名前が見つかる。
しかし、「南イタリアのフィレンツェ」だなんていうレッチェの二つ名、よく知っているな。
やっぱり科学班はすごく物知りなのだろうか。
「そこがどうしたんですか?」
再びポットからお湯を注ぎ始め、私は仕事に取りかかる。
いつの間にやらジョニー君は私のすぐ隣にいて、動きをじっくり逃さぬように眺めていた。
手の中には分厚い資料。
どうやらそれはすべてレッチェのことについてらしかった。
「どうやら、こっちの方面で奇怪現象が起きているらしくてさ...近いうちに、エクソシストを誰か送らないと」
「えっ、それ...」
言いかけてあわてて口をつぐむ。
「私が行きたいです」なんて、言えないことを思い出した。
もう私はエクソシストじゃない。イノセンスを持っていないのだから。
...もう私は。
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∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - ログ@エネさん» ちょっw興奮しすぎじゃき( 読んでくれてありがとう!少しずつ二人の仲を近づけていきたい!…です( (2014年5月17日 19時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
ログ@エネ(プロフ) - おおおおお?ついに?ついに?ラビへの思いに気づくか? (2014年5月17日 0時) (レス) id: 4873300096 (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 夏みかんさん» そんな嬉しいこと言わないでください…マジで感激で泣いちゃいますよ>< 本当にありがとうございます!いつも閲覧頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。これからもどうかよろしくお願いします! (2014年5月12日 17時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん - 素晴らしいです。あぁ、めっちゃ好きです!更新頑張って下さい。 (2014年5月12日 15時) (レス) id: 6748ba7e6c (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - 羽さん» 楽しませることができて光栄です!更新、頑張らせていただきますね^^ (2014年5月3日 23時) (レス) id: c31f9c6564 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年1月12日 15時