【D.gray-man】 Sorry but Goodbye -Secondo-

「足引っ張って、ごめんなさい」 ページ4

「何考えてんだテメェは！！死にてぇのか！！」

安全そうな岩場に着くなり、神田さんは私を飛ばす勢いで叫んできた。
それにこたえることも出来ず、私はただ俯いたまま突っ立っていた。

戦意喪失どころか、ただ呆然と言葉さえなくしてしまった。
頭の中には繰り返し「どうして」という問いがぐるぐる回っていた。

「…おい、聞いてんのか！！」

いっそう大きい声で神田さんは叫んだ。
それに対し、私は気の抜けた声で小さく呟いた。

「…イノセンスが、」
「…あ？」

呆然としたままで言葉を紡ぎ、気づけば先ほどのように地に膝をついていた。
痛みも感じられず、ただ異常に静かな自分の中に、激しい自分の鼓動が聞こえた。

「イノセンスが、いないんです…」

辛うじて絞り出したその言葉に、溜まっていた涙が再び溢れ出した。
流しても流してもどんどん溜まっていく涙に、自分でもどうしようもなかった。

ただ極端に無力に感じられ、自分が儚く小さい存在に思えた。
それと同時に、自分の存在のうち、どれだけイノセンスが重要だったのかを思い知らされることになった。
イノセンスがいなければ、私はただの人間に戻ってしまうから。

「…どういう意味だ。」
「わ、わた、し、イノセ、ス解放するときはっ…」

嗚咽交じりにどうにか言葉を紡ぎだすが、それが相手にちゃんと理解できているかが心配で仕方がない。
精一杯しっかり喋ろうと思うが、そうすればそうするほど空回りしていくような感覚。

「い、いつも、イノセンスの声が聞こえ、っんです…な、のに、いっ、今はき、こえなくって…ッ！」

ボロボロとみっともなく情けなく泣き出した私を、ただ神田さん冷静に見つめた。
力も使えない旨を伝えるても、相変わらず神田さんは黙ったままだった。

どうして。
心当たりがあるとすれば、一つだけしかないだろう。
シンクロ率だ。
でも、シンクロ率が下がって急に使えなくなることなんてあるのだろうか？

少なくとも、今までそんなことはなかったのに。

突然神田さんの溜息が聞こえた。
不安に見上げれば、整った端正な顔立ちがそこにあった。

「俺が片付けてくるから、お前はここにいろ。」
「は、い…」

一気に気分が落胆した。
イノセンスなしで戦えるなんて馬鹿なことを考えてはいないけど、それでも役立たずときっぱり言われた気分だ。

「神田さん」

今まさに飛ぶ準備をしていた神田さんは、不機嫌そうに振り返る
その顔を見ずに私は呟いた。

「足引っ張って、ごめんなさい」

「大丈夫さ！」って言ってくれる。→←「…イノセンス…ッ？」

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