７６ ページ26
確かに昨日、『輝き』を届けるとは決意した。おれ達だけの、おれ達『ALKALOID』にしかないものを魅せるって。
ただそれにしても、案件が舞い込んでくるのが早すぎではなかろうか。
「え……ま、マヨさん、今なんて…？」
ストレッチ中だと言うのに、おれは思わず顔を上げてしまった。その反動で少し首に痛みが走ったが、今はそれどころではなく。
マヨさんはおずおずともう一度話した。
「は、はい…ですから、約一ヶ月後のライブ――『エルダーハンド』は、私達『ALKALOID』と…『Knights』の方々の合同ライブとなります…です」
おれが変に見つめすぎたのか、語尾が変になってしまっている。
「…ま、マヨさん…も、もいっか――」
「藍良さん」
「うぐえっ」
わなわなと震えながらもう一度説明を求めようとしたところを、タッツン先輩に背中をぐっと押された。優しいのか、手厳しいのか…
「フム…『Knights』か…確か幾度となくお世話になったね」
「えぇ、はい…実はつい昨日決まった事でして、急ではありますが今日のお昼にその打ち合わせとやらに向かう予定です」
「あ…あの『Knights』と…おれ達が…合同ライブ…！？」
だめだ、飲み込めない！いきなりすぎる！だっておれ達も活動が軌道に乗ってきたとはいえあの人達に比べたら新人程度なのに！なんで皆平然としてるのォ！？
「しかし、どうして先方は我々と…？」
「…その理由というのも、本日話すと言われたままで私も分かっていません。ですから正式に決定した訳では無いのですが…とりあえず打ち合わせにだけは出席しないといけなくて…あぁすみませんすみませんっ、私のような風の前の塵同然の者が橋渡しをしてしまって…っ」
「いえ、お気になさらず。寧ろ一番気を遣う役回りをさせてしまって申し訳ないくらいですな」
「ヒィイイ…そんな、私はただ言われた通りに動くだけの駒ですからぁ…っ」
「…いや、本来はリーダーである僕の役割だったはずだ。もしかしたらマヨイ先輩を伝う事に意味があったのかもしれないけど…ありがとう、マヨイ先輩」
聖人とリーダーに感謝をされて、今にも消し飛びそうになるマヨさん。なんとか保ってるみたいだけど…。…にしても謎が多すぎる。
なんで『Knights』がおれ達と…？
「しかし今はレッスンに集中しましょう。話し合いは昼からです、それまでは考えていても仕方ありませんからな」
「…うん。そうだねェ」
まだ疑問を拭いきれないまま、おれ達はレッスンに臨んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冴波せつ | 作成日時：2020年5月4日 12時
