【黒○】好きすぎて、どうしよう【赤降】

第十九話 降旗side ページ20

「光樹……？」

俺は征の手を掴んで歩き出していた。行くあては特にない。ただただ直感で駆けて外に出た。人ごみの大通りを抜けて狭い商店街も一気に抜けて寂れた公園に出た。征はずっと、何も言わなかった。
息の上がってしまった俺たちは、ふと空を見上げてもう夜だったことに気がつく。自分から引っ張ってきたくせに黙っているのは気まずかったからなんとなく思ったことを口にした。

「……すっげきれいな月だね」

言ってから気がついた。あれ、このセリフやばくないか……？なんか、誤解を招きそうな、いや、誤解ではないんだけど。

「あ、いや、その、深い意味はないんだ！」

深い意味はなしに言ったけど、好きなのは本当だよ。本当だけど、言えなくて。

「ごめん、なんかごめん」

俺が謝ると、征が不思議そうな顔をする。あ、もしかして"月が綺麗ですね"の意味を知らなかったのかな。墓穴掘ったかも。と思ったのはほんの一瞬だけだった。

「光樹、」

征が突然俺の手を掴んだ。さっき俺がそうしたよりもずっと強く掴んだ。

「"月が綺麗ですね"」

手の冷たさから征の緊張が伝わってくる。まっすぐ見つめてくるその視線に俺は動けなくなる。

「僕は、深い意味があって言っているよ」

その緊張から本気だということがわかる。

「ねぇ、光樹」

征が俺を引き寄せて両手を握り合う形になる。

「光樹は、僕のこと、好きじゃないの？」

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