【黒○】好きすぎて、どうしよう【赤降】

第十六話 赤○side ページ17

柄にもないことをして完全に調子が狂ったらしい僕はハイテンションを飛び越えて謎の冷静さを獲得していた。

「俺、とんこつラーメンにしよーかな。征は？」

ああ注文か。光樹が隣にいるだけで満足だったから、僕はご飯を食べに来たことをすっかり忘れ去っていたようだった。

「僕は、……ん、んー、むむむ」

そういえば普段家で出されるものが何ラーメンなのか知らない。どうしよう、とにかくもう適当でいいから早く決めなくちゃ……。

「征もとんこつラーメンにする？けっこうおすすめだよ」

「じゃあ、そうしてみよう」

光樹は僕が決めかねてるのを見て助け舟を出してくれたようだった。

「ん、りょうかーい。すみませーん、とんこつラーメン二つお願いします」

「……」

「……」

厨房の音は好きだ。油の跳ねる音。換気扇の音。心地よく響く包丁の音。職人さん同士の息ぴったりな作業分担も見ていて楽しくなってくる。
しばらく見入っていたけれど、ふいに光樹に見つめられていることに気がついた。

「ごめん、なんかぼーっとしてた。……話したいこと、あったんだよね？」

「あの、その、なんていうか」

光樹はなぜか驚いた様子で一瞬言葉に詰まった。少しうつむき加減で何やら困ったような顔をしている。だかその顔が再び僕のほうにまっすぐ向いたとき彼の表情に迷いは読み取れなくなっていた。

「俺、さ！征のこと、」

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