５５話 〜Your side〜 ページ6
「……冷た」
試しに手をかけた金属の柵は、すっかり冷えきっていて痛いほどだった。
こうしてしたを覗き込んでみると案外高い。空は凛と青く澄んで、私もそうなりたい、そうなりたかったなんて、後悔が胸をかすめた。
痛いかな、苦しいかな、逝くなら楽に逝きたいな。
こんな高さから落っこちたら痛いに決まってるのに、逝かない言い訳を見つけるためにあれこれ考える。
仕事、今のところでとめといたらキリ悪いよなぁ。あ、今日晩御飯グラタンにしようとしてたんだ。ちょっと食べたいな。
冷たい感触は、私の手の熱が移り徐々に薄まっていく。
……死ぬなら、最期におそ松に会いたかったな。
私がここから落ちないための理由だけをつらつら述べる脳内。
結局のところ、怖い。覚悟もない。でもここにいても死んでるのと一緒だ。だったらいっそ全部捨てたい。
つむじ風が屋上の隅の枯れ葉を巻き上げた。その風は私の髪の毛をも弄び、やがてまた遠くへ消えた。
「……バカバカし」
柵から離れた。結局私は死ぬ勇気や根性すらないのだ。
その場にへたりこんで、空を仰ぐ。
ひつじ雲が揺らめいて、流れていく。
外気は寒いが太陽の光はぽかぽか暖かい。
「……帰ろうかな」
具合が悪いと言えば帰らせてくれるだろうか。
もう仕事をする気は湧かなかった。出来ることなら今日はもうこうしてぼーっとしていたいものだ。
空の青は、高い。高くて高くて到底手が届きそうにないほど。
小さい頃は、空にだって手が届くと思ってた。天井があると思ってた。
でも空には天井なんてない。いくら伸ばしても手は届かない。
……ああ、それっておそ松みたい、と思った。
もうきっと同じところには立てない。戻っては来てくれない。すぐそこにいても、触れられない。
記憶のおそ松全てに霧がかかったように、その姿が揺れた。
いかないで、逝かないで、手を伸ばすけど届かない。君は笑うだけ、子供みたいに花咲く笑顔で。
ねぇ、おそ松。
私がもう一歩踏み出したら、あなたに追いつけますか？
私が勇気を振り絞って一歩、進めたら、その時は君に触れられるかな。
澄んだ空の下、彼を思い誓った。
だったら私は何歩だって前に進んでやる。
何故かはわからないけど、今のままじゃ君とこのまま生きていく訳には行かないから。
その先に待つのが絶望だとしても、虚無だとしても、
足掻いてもがいて、前に進んでやる。
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紫乃原―ｼﾉﾊﾗ―(プロフ) - シバさん» あっ今向かいます！ (2018年2月16日 21時) (
レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
シバ(プロフ) - 紫乃原―ｼﾉﾊﾗ―さん» イメ画、できやした！！イラスト集のぞいてみてください｡。。起きになさらないようでしたらもう一度お書き致します！ (2018年2月16日 16時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―ｼﾉﾊﾗ―(プロフ) - 由香さん» 由香さん！コメントありがとうございます(*´ω`*)嬉しいです！ ちまちまとにはなりますが、更新頑張るので今後も是非よろしくお願いします！ (2018年2月16日 14時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
由香(プロフ) - 思わず夢中になって読んじゃいます！これからも応援してます！ (2018年2月16日 11時) (レス) id: 91048a20b2 (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―ｼﾉﾊﾗ―(プロフ) - シバさん» 本当ですか!?すっごい嬉しいです(´；ω；｀)ありがとうございます！はい、頑張ります！ (2018年2月10日 19時) (レス) id: bf5d35752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫乃原―ｼﾉﾊﾗ― | 作成日時：2018年1月29日 17時
