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39話 〜Your side〜 ページ40

あれ?
思わずぴた、と手を止める。

私の様子が変わったのを重ねられた手のひらから感じたのか、おそ松が私の顔をのぞき込む。

『……A? どした?』
「うん、いや……ごめん」

のろのろとおそ松の背中から離れ、呆然とその場に立ち尽くした。
……おそ松の温もりが、すぅと冷めていくようで寂しかった。

「私、ちょっとトイレ行ってくるね」

頭の中身を整理したくて、私はリビングを立ち去ってトイレに閉じ込もった。

「なんで」

なんで、気が付かなかったんだろう。


トト子ちゃんは、何故おそ松の存在に違和感を感じないのか。

だっておそ松は「死んで」いるのだ。
幽霊なのだ。この世のものではない、というのに何故あんなにも平然とおそ松を受け入れているのか。

私はトト子ちゃんに一言たりともおそ松の話をしていない。
馴れ初めやノロケなんかは話したけれど、今家にその幽霊がいることなんて、話した覚えはないのに。

混乱の中で必死に考えたけど、頭がうまく働かなくて、ただずっとトイレの壁を見つめていた。

トイレに立て篭もって10分かそこら、経った頃。

__コンコン

トイレのドアが叩かれた。
「……誰?」
「私よ、トト子。 ……顔色、悪かったけど大丈夫?」
「あ、トト子ちゃんか。 ごめんね、大丈夫。 今出るから……」

さて、どんな顔をしていればいいのか。
と熟考する時間はもちろんなく、項垂れながらトイレの扉を開けた。

「ごめんね、ご飯にしよっか」
「やったー! トト子お腹ペコペコー」

……トト子ちゃんの考えは、全く読めない。
今、彼女は何を考え、何を思っているのだろう。
あの笑顔の裏側には、何が隠れているんだろう。

彼女のぴこぴこと跳ねるツインテールを目で追いながら、リビングに戻った。

がちゃ、というドアの音に、赤いパーカーの肩がビクッと跳ねた。

……

「おそ松?」

項垂れたその顔は、なんだか青ざめているように見えた。

『あぁA、腹減ったよ〜…… メシにしよーぜ、メシ』

……あ、無理やり笑った。
ひくつく頬とぎこちない目がそう物語っていた。

私のいない十数分、二人の間に何かがあったのは、そんな様子や空気から何となく、感じ取れた。

「そうだね、ごめん」

キッチンに向かいコンロの火を止めた。
……よかった、焦げてないみたい。
かち、と火を止めて、鍋にフタをした。

湧き上がる私の色々な気持ちにも、同時にフタをして。

40話 〜カラ松side〜→←38話 〜Your side〜



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設定タグ:おそ松さん , カラ松 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» ほぉ!!!ありがとうございます!!!早速見てきます♪ (2018年1月30日 0時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» シバさん!お待たせしました!先程公開してきましたので、是非ご覧ください!よろしくお願いします。 (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます!続編はただいま執筆中で、公開できる状態ではないんです……ごめんなさい(;_;) もうすぐ公開しますのでお楽しみに! (2018年1月29日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)
シバ(プロフ) - 紫乃原―シノハラ―さん» この続編、パスワードですよね…どうすれば良いのでしょうか? (2018年1月29日 20時) (レス) id: 1c78cabc1b (このIDを非表示/違反報告)
紫乃原―シノハラ―(プロフ) - 来夢*゚さん» 来夢さん、はじめまして!なんて素敵なお言葉……光栄です。本っ当に嬉しいです。ありがとうございます(T-T) これからも更新頑張りますので是非これからもよろしくお願いします! (2018年1月10日 21時) (レス) id: 8760750b24 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫乃原―シノハラ― | 作成日時:2017年1月7日 8時

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