6話,影片くんと ページ8
……side,You.
そんなこんなで、本番10分前になっていた。もうそろそろ袖に行かないと。
「さて、もうすぐ出番だね」
「A、ギターのチューニングは良いのかね?」
「うん!もうバッチリだよ」
私はシックな木目のギターを掲げてみせる。
「…では行こうか、僕の人形たち」
こうして、私たちはしゅーくんに続くように、楽屋を出たのだった。
ライブは勿論大成功。
しゅーくんとなずにゃんの演奏もバッチリだし、影片くんのダンスも一年生とは思えないほどの出来栄えだった。
私も特に目立ったミスはしなかったし……あそこのギターソロもばっちり弾けた。
よく3日、いや2日か?で仕上げたもんだよ……
「お疲れさまー!皆、すっごく良かった!やっぱり半年前とは出来が違うね」
各々普段着に着替え、ライブハウス前に集まった。
「ええっと…一年生、だよね影片くん」
私がそう言うと、影片くんはビクリと肩を揺らす。
「あ、ごめんね。驚かせちゃったかな?影片くん、ダンス凄く上手だなって思って」
「そ、そんな別におれは……」
そう俯き気味に返事する影片くんの耳は少し赤い。
しゅーくんのことだし、こんなに上手な影片くんのことを褒めていないんだろう。褒められ慣れていないのかもしれないな。
「もう遅いし、何かあってからでは困る。僕は仁兎を送って行くよ。影片、Aに着いていてくれ」
「わ、わかった」
影片くんは少し戸惑ったように、私をチラリと見た。
「じゃ、帰ろっか!」
私の後を影片くんは着いてくる。
「……えっと、影片くん?」
「はっ、はい…?何?」
「何で後ろ歩いてるの?一緒に歩こうよ!今日のお話しよ?」
私がそう言っても、「いや、おれは…」と渋る影片くん。
仕方ないので、私は影片くんの腕をがっしりと掴んでみた。
「……細」
大丈夫かこの子ちゃんと食べてるの…??
「ね、ねぇ影片くん?影片くんってダンス経験者?」
「いや…高校入ってから始めたばっかりやけど」
「そうなの!?じゃあほんとに最近じゃん。凄いんだねぇ、才能あるよっ」
私はダンスはからっきしだからなぁ……
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作者名:黎亜 | 作成日時:2019年2月7日 13時