幸せな記念日 (ページ4)

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千賀に何やら耳打ちされながら、クスクスと笑っている宏光

チラチラとニカの方を見ては2人で顔を見合している所を見れば、内緒話の話題はニカなんだろう

宏光が耳打ちすると、途端に顔を赤くして俯く千賀

千賀は本当にニカを好きなんだろうな…

「……なぁ、わた…」

「ん？」

俺の隣で雑誌をペラペラ捲ってる渉に、宏光に視線を置いたまま話し掛ける

「……わたからは、俺達って、どう見えてんの？」

「俺達って…ミツ？」

「うん…。」

突然の質問に渉が一瞬言葉を詰まらせたのが分かった

「…どうって…もしかして、この間の事、気にしてる？」

「自分でもさ、思い当たる所があったから…」

「例えば…？」

「うーん、自分たちの気持ちよりも仕事を優先しちゃったりとか…。」

「それはさ、ちゃんと感情をコントロールできるようになったって事でしょ？」

「そうとも言うけどね。…ただ、ニカと千賀を見てると、俺達もあんな頃があったなぁ…って思っちゃってさ。」

「…」

「ニカが言ってたワクワクドキドキ？そう言えば、最近そう言うのないなぁって。」

宏光は俺といてワクワクドキドキするような事があるのかなぁ…

俺は宏光に比べたら、人を楽しませるって事には長けてはいないし、宏光ほど趣味も多くない

5年という月日は俺達に、信頼と安心は与えてくれたけれど、同時に新鮮さや輝きを奪って言った気がする…

じっと俺の顔を見つめていた渉が、俺の考えている事を読み取ったように微笑むと静かに話し始めた

「ミツがね…」

「ん？」

「太輔にギター、プレゼントしたでしょ？」

「あ…うん。」

「最近、個人の仕事も増えて来て、なかなか太輔とも一緒の時間が作れなくて寂しいってずっと言ってて…」

確かに、最近は仕事ですれ違う事も多くて…

一緒に住んでいても自宅に持ち帰る仕事も多くて、自分の部屋にこもりがち

2人でゆっくり過ごした時間はほとんどなかった

「仕事でも、太輔と同じ時間過ごしたいから、ギター、一緒にやりたいって。」

そっか…

それであんなにギターに拘ってたんだ…

「太輔がギターやる気になってくれたって、ミツすげぇ喜んでて…。そん時の笑顔がね、太輔に怒られちゃうかもしれないけど、本当に可愛くて。俺、思わず頭撫でちゃった(笑)」

最後の言葉は気に入らないけど、宏光の喜んでる顔を思い浮かべてギュッと胸が熱くなった

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