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彼女はただ黙って俺を見つめている。
この告白に、答えを求めていないことを、彼女は知っていた。
俺の心はとても穏やかで。波風1つ、立っていなかった。


「お前が上杉の事が好きでも。お前が俺の事好きじゃなくても。
 俺、やっぱりお前の事変わらずに好きだよ。」


彼女の大きな瞳に映る俺は、とても、とても穏やかな瞳で笑っていた。


「お前が上杉と付き合ってても、多分消えないわ。やっぱ。」


早く消そう早く消そうと、躍起になっていた。
なくそうなくそうと、目を向けなかった。
ひたすら邪魔で、いらないもので、早く消えてなくなれと思っていた。
けれど、そんなの無理だと今更になって気づく。
だってこんなに好きなんだ。振られて、はい好きじゃなくなりましたなんて無理だ。
彼女への想いが深いからこそ。彼女への感情が強いからこそ。
それを今すぐ完全に消し去ることなんて、出来るわけがない。


「だから、」


だから。


「今はまだ、お前の事好きでいさせて。」


追い出すんじゃなくて。消そうとするんじゃなくて。
この気持ちを、俺自身が受け止めよう。
ただただ、この想いと一緒に付き合っていこう。
どんなに時間をかけてもいい。どんなに長くてもいい。
この想いと向き合って、大切に抱きしめて。
この愛しさを。この愛情を。完全に、優しい思い出に出来たら。


「そうしたら。」


僅かに滲む、彼女の涙を拭う。


「いつか、おめでとって言ってやるよ。」



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ショートピース - 最後まで感動してしまいました (12月3日 21時) (レス) @page18 id: 863f8c46c7 (このIDを非表示/違反報告)
Laso - 深い愛情が感じられました。この作品、何回読んでも胸がジーンとします。若武の暖かい優しさに、何度泣きそうになったことか…。感動をありがとうございました! (2019年4月4日 13時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - あけぼの7110さん» 失恋は辛いですよね……どんなに時間をかけてもいいので、小説に書いたように自分の気持ちを大切にされてくださいね。本当に嬉しかったです。意欲を貰いました……ありがとうございました<(_ _)> (2017年7月26日 19時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
Kobato*(プロフ) - あけぼの7110さん» あけぼのさん、届いたコメントを読んで今までにないくらいに本当に嬉しかったです。私の書く小説を通して、誰かに何かを伝えられたら何かその人の心に影響を与えられたら、と思いながら書いているので、そう言っていただけて本当に勇気をもらいました。 (2017年7月26日 19時) (レス) id: 1a71bdddc1 (このIDを非表示/違反報告)
あけぼの7110(プロフ) - すごく泣けました(T ^ T)若武の気持ちに少し共感する自分がいました。私もつい最近失恋してしまったんですけど、若武の十年後の話で私も少しずつでいいから進まなきゃと思いました。 (2017年7月25日 19時) (レス) id: 744a83138f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kobato* | 作成日時:2017年6月12日 18時

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