彼のこと、十一つ ページ10
▽noside
季節は秋。
生徒等の制服も夏服から冬服へと衣替えを始めた時期だった。
朝早くから少年は屋上へと来ていた。
朝、早く来ては誰も聞きはしない自分の歌を自由に響かせるのだ。
少年は"歌わなくなった"のではなく"歌えなくなった"自分の喉が大嫌いだった。
「〜♪〜♪」
いつかのアンサンブルを口ぶさむ。
こんな時間に来ている生徒はいないだろう。自分が昔作詞した曲を歌っていた。
最後の8小節を見事に伸ばし切ると何処からと無く拍手が聞こえてきた。
「いい歌だったぞ!!A!!」
少年がびっくりして後ろを振り向けばそこには森沢千秋がいつのまにかずっしり佇んでいた。
「……いつからいたの」
呆れたような顔で問うと千明は笑顔で「さっきから!!」と元気よく応えた。
「さっきの歌、どうだった?」
心持って、勇気をだして千秋に問う少年に千秋は『へ?良かったぞ!!』と表裏無い表情で告げた。
ここで歌えるのは明日で最後になる。
そう思って少年は久しぶりの高笑いを上げた。
少年の心が再び動き始める音がした。
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やさいため - 涙君の彼女になりたい♪さん» ありがとうございます!!励みになります。 (2016年12月30日 21時) (レス) id: 2e39b44989 (このIDを非表示/違反報告)
涙君の彼女になりたい♪ - はじめまして!とっても面白いです!更新頑張ってください! (2016年12月13日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やさいため | 作成日時:2016年10月2日 18時