探偵達はカフェにいる【オリジナル】 (ページ16)

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アドニスはバーニャカウダーがお好きページ16

　人生でまたとない経験だと思う。自分で経営しているカフェに、超絶美形のミュージカル俳優がお客さんとしてきて、自分の料理が食べたいと注文をしてくるなんて。カフェを始めたばかりの時はこんな事が現実で起こるだなんて想像すらしていなかった。

「今日は小腹が空いちゃっていて。Aさん、何か注文をしたいんですけれど、おすすめとかありますか？」
「お、おすすめですか……？本日のおすすめはこれですが……」

　渡したメニューをまじまじと見つめる青い瞳、いつ見ても綺麗なのが羨ましい。スカーレットさんやレイモンさんも同じく青い瞳だけれど、二人とはまた違った色彩だ。美形って色にでさえ愛されているんだろうな。どんな有彩色だろうと無彩色だろうと着こなすんだろうなあ、このイケメン。

「うん……じゃあ、バーニャカウダーを注文しようかな」
「ご注文受けたまわりました」

　頼むものですらオシャレときたもんだよ。冗談のつもりで書き加えたメニューなのに、本当に頼む人がいるなんて思います？そこらへんのハンバーグとか頼みなさいよ貴方、なんですかバーニャカウダーって。美形って映えそうなもんしか食べないってか……いけないいけない、なんで卑屈になっているんだ私は。

　さて、準備に取り掛かろう。まずは野菜の準備から……ラディッシュ、ヤングコーン、パプリカ、ブロッコリー、ズッキーニ、あとは……あ、セロリとかどうかな。イケメンってセロリ好きでしょ、うん。

　バーニャカウダーのソースの材料も用意しよう。ニンニク、オリーブオイル、アンチョビ、生クリーム……あとはチーズ、私のおすすめはパルミジャーノ・レッジャーノ。毎回思うんだけれど、このチーズの名前ってサッカー選手にいそうだよね。

　ニンニクをささっと処理してから、牛乳と水でゆっくり煮込む。煮込み終わったら、ニンニクとアンチョビ、生クリームをミキサーにかけて……うんうん、いい感じ。あとはオリーブオイル入れて、チーズをおろしてから再度ミキサーにかける。我ながら素晴らしいのができたんじゃない？

　出来上がったソースをチーズフォンデュ用の小鍋に移して、固形燃料に火を灯す。お野菜をたくさん並べて──はい完成！マスター特製『冗談で加えたメニューを頑張って作りましたバーニャカウダー』！！ありがたく召し上がりやがれイケメン！！

「お待たせしました、バーニャカウダーです」
「ありがとうAさん」

　静かに優雅に野菜を食べるその姿、あーやっぱり美形は何にでも愛されているなぁぁあ！？