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第肆拾壱章・「薬室長」 ページ41

サァッと血の気が引け、顔が青ざめる。

手足・・・否、体全体がカタカタと小刻みに震える。

「あ・・・あ・・・ぁ・・・」

喉から絞り出した声は、何とも情けなくて。

こんな声では助けを呼ぶこともできやしない。

きょどきょどと動く瞳で目の前の光景を目に入れる。


僕に突き飛ばされ、真っ白な壁にぐったりともたれかかるシエル。

シエルが顔を俯かせているせいで表情が見えない。

だがさっきから震える声で何度呼びかけても反応してくれない。


「ねぇ・・・起きてよぉ・・・・僕を・・・・っ、僕を、ひとりぼっちに・・・しないでよぉ・・・っ!」


目に涙が浮かぶ。

どれだけ声を出したって、叫んだって

届いてはくれない

それはまるで

あの日の千鶴のようで―――



「おやぁ〜・・・殿下、お目覚めですか〜?」


突如、患者室の扉を開ける音と、その後ふわふわとした可愛らしい声が聞こえ、

その声がした方向に顔を向ける。

そこには桃色のくるんくるんな髪を肩くらいの長さまでに整え、

純白の白衣を着た女性が小首を傾げて立っていた。


「・・・あ、私のこと知りませんよねぇ〜、

 私は宮廷薬剤師薬室長のルシアと申します、以後お見知りおきを」


そう言った女性・・・ルシアはゆっくりとお辞儀をした。


自分的には"薬室長"って長老っぽい・・・おじいさんみたいな人で、

「おやおや、殿下・・・お目覚めですかいな」みたいな感じで丸眼鏡(老眼鏡)をくいってあげて、

愛用の白衣を孫のように扱ってるみたいなイメージがあったのだが。


(この薬室長大丈夫かな)


先程から「ちょっと生姜湯入れましょうか〜?」なんて言った矢先に

足元のカーペットの角に足をかけてしまって転倒し、涙目になってるし、

それに今も「はぅあっ」という情けない声をあげて何度もコップを割ってしまっている様子。


そんなルシアに「生姜湯はさっきシエルに飲ませてもらったからもういいよ〜」というと

「すみませ・・・ひゃぁうっ?!」という(おそらくまた転倒した)

これもまた情けない返事が返ってきた。



「・・・・・・あれれぇ〜? シエルくん、寝てる? どうかしたのかな?」


台所から戻ってきたルシアはぐったりと壁にもたれかかるシエルを見て首を傾げる。

僕はそっと目を伏せ、謝罪した。

「・・・ごめんなさい、僕が、突き飛ばしちゃって・・・それで、その―――」

するとルシアは僕の言葉を最後まで聞かずに、

僕の頭を優しく撫でるとふんわりと笑った

第肆拾弐章・「お友達」→←第肆拾章・「心の病」



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あぉぞら - すいません!紅覇くんの消してしまいました…。短編集書いてるので、良ければそちらを…!すいません!玲琉.さんの作品、大好きなんでこれからも読ませて頂きます! (2015年6月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - あぉぞらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてすごく嬉しいし励みになります・・・! あぉぞらさんの小説は時間があれば是非読ませて頂きます・・・! (2015年6月9日 18時) (レス) id: 7d3c1dd707 (このIDを非表示/違反報告)
あぉぞら - 私、小説の一気読みはしないんですが、この小説は面白すぎて一気読みしました!私も紅覇くんの小説かいてるので、良かったら見て下さい! (2015年6月9日 1時) (携帯から) (レス) id: 0a5444ed6a (このIDを非表示/違反報告)
もちづき。(プロフ) - 玲琉.さん» ひえええぇありがとう・・・!!発想力というか妄想りょ((ゲフンゲフン。うん!ちょっと息抜きとかに読ませてもらうね! (2014年12月29日 14時) (レス) id: 8ea19f9ae6 (このIDを非表示/違反報告)
玲琉.(プロフ) - もちづき。さん» 来てくれて有難うー!!!!つきちゃんは文才あると思うよ^^っていうか恋愛のシチュエーションとかの発想力がすごいと思う!この小説はマギ知らなくてもわかる内容だと思うよ・・・!多分・・・!良ければ全部読んでやってね()綺麗な文章とか何それ嬉しすぎ>< (2014年12月29日 14時) (レス) id: 754b0bfd10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:玲琉. | 作成日時:2014年4月4日 18時

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