折り鶴と、千羽鶴と。 【練紅覇】

第拾参章・「瞳」 ページ13

誰もいない部屋に、乾いた音が響く。

その音は、私がページを捲るアルバムから聞こえる。


全体的に紅色と金色をモチーフにされた空間。

寝台は天蓋付きで、豪華。

明かりとなるシャンデリアが天井にぶら下がっているが、電気はついていない。

薄い紅色のカーテンの隙間から見える空は茜色に染まっていて。

微かな光が帯状に差し込んできていた。


ここは、紅覇の部屋。


私は神官さんとお喋りしたあと、この場所へ来てしまっていた。

何故だか、分からないけど

無意識に。


紅覇の部屋にある本棚から引っ張り出した古ぼけた表紙のアルバムに残されている写真には

恩人と紅覇が笑顔で写っていた。

ほとんどがそういう類。


"あの少女"の写真はあの一枚しかない。


淡い碧色の写真立てに入っている写真に目をやる。

そっと立ち上がり、今見ていたアルバムを元の本棚へと直し、

その写真立てが置いてある、紅色の寝台の横にある小さな机に近寄った。



綺麗な淡い碧色の写真立てに入っている写真

その写真に写る、ひとりの少女。


この写真は、昨夜紅覇が強く抱きしめ、泣きながら話しかけていたもの。


この少女は、紅覇にとってどんな存在だったのか――



写る少女をじっ、と見つめる。


紅覇は昨夜、「なんで君はAと似ているんだろう」と言っていた。


なのでどんな子なのかと期待していたが、

髪の色も顔立ちも違う。


私が黒髪のくせっ毛なのに対し、少女は淡く水色がかかった銀髪でストレート。

その髪は肩の長さで揃えられている。なので私より短い。


――と、様々な違いはあるのだが、

似ている点がないというわけではなかった。


それは、瞳の色と雰囲気。


雰囲気はなんとなくだが似ていると感じた。

瞳の色は、なんとなくではなく確実に似ていると感じた。


私と似ている、黒曜石を埋め込んだような瞳。



「そっか･･･これのせいで･･･」



ポツリ、と声を漏らす。


黒曜石を埋め込んだような瞳、漆黒色の瞳･･････闇色の瞳。


これは、煌帝国では珍しいものだった。

他国では"黒い目"など全く珍しいものでも何でもない。


だが、煌帝国には数少ないもの。

そして、この少女は"黒い目"だった･･･私と、同じ。

煌帝国の城の者は"黒い目"を珍しがった。

それは、紅覇も同じこと。


だから･･･紅覇は重ねた。

私と、この少女のことを。


目が「同じ」だったから


この少女も"黒い目"だったから―――

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