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それからいくつか品を売り飛ばした後、ついに私の番が回ってきてしまった。
「この女性は16歳。平民ではありましたが、顔立ちやスタイルも整っていて若いので、使い道は多様です。それでは10万からいきましょう」
次々に値段が釣り上げられる。私にそんな価値などあるのだろうか。
「300万」
誰か低い声でそう言えば、静かになる会場。私はその声の出所を見た。
余裕ぶっこいたような目と座り方。ジャケットはボタンを止めるにはキツかったのか、外されている。
…嫌だ。
直感的にそう思った。
「それでh「350万」」
不意に聞こえた、聞きなれた声。
けれど、数日間聞かないだけでとても懐かしかった。
唐突に溢れる涙。
「くっ…430万!」
「500万」
落ち着いたその声。
男の人も諦めたのか、誰も声を発しなかった。
「それでは500万円で落札です。」
落札した方は引き取りにきてください、と言えばスーツを身に纏った「彼」が壇上に登ってきた。
腕と手首、そしてお腹を縛られていた縄がほどかれ、床に足をつけた私は彼の目を見つめた。視界が歪む。
「っか、なた…!」
「遅くなってごめん、行くよ」
彼方は私の肩を抱きながら会場を後にする。
会場を出る間際、私は後ろを振り替えって飛鳥さんを見た。
目が合い、ウインクをされた。
それがどんな意味かもしらずに。
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作者名:月見だんご | 作成日時:2018年3月31日 23時