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抱き上げられたまま連れられてきたのは大きなホール。
そこの舞台上に立っている十字架に手首と肘のところ、そしてお腹を縛られた。
そして青いカーテンの様なもので周りを囲われた。真上から、会場のライトで明かりが入ってきていた。
四方を青で遮られてしまった今、音だけが聞こえている。
衣擦れとカシャン、というものが取り付けられる音だけ。
どれほどそうしていたのだろうか。
不意にその音さえも無くなった次の瞬間、会場にざわめきが広がった。
オークションに参加する人が入ってきたのだろうか。
ざわめきが最高潮に達した時、木と木がぶつかる特有の音が会場内に響き渡った。
静まるざわめきと同時にバサリ、と取り払われたカーテン。
「────これより、名家飛鳥家主催、オークションを開始致します!」
大喝采が会場に響いた。
見渡す限り人、人、人。
すると、斜め前に誰かが歩み出た。
「お久し振りです、皆様。我が飛鳥家主催のオークションへようこそお出で頂きました。今回のオークションも一級品が揃っております。それに」
先程まで私を抱き上げていた“あの人”が、私の方を振り向いて笑った。
「今まで手が出せなかった“人”。それも女性を出品しております故、どうぞ吟味してください」
あの人は飛鳥、と言うのか。
会場にざわめきが広がった。しかし、どこからか「素晴らしい!」との声があがると次々に拍手が起こった。
反対に、私は心の中で悪態をつきまくっていたが。
「それでは、オークションを開始していきたいと思います。最初はこの宝石、レッドダイアモンドです」
どよめきが広がった。
彼は微笑を浮かべたまま再び口を開いた。
「これはただのレッドダイアモンドではございません、失われた宝石、と呼ばれるものです。現在確認されている、ムザイエフ氏が所有しているものよりも大きなものを我が飛鳥家が入手致しました。それでは1億円からいきましょう」
1億円、なんてふざけた男子の口からしか聞いたことが無かった。
それだけ価値の高いものなのだろうか。
「5億円!」
「いや、8億!」
「11億だ!」
とんでもない値段が飛び交う中、最終的に20億で決まった。
その有り余った金を平民に分け与える気は無いのだろうか。
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作者名:月見だんご | 作成日時:2018年3月31日 23時