検索窓
今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:16,074 hit

1.プロローグ ページ1

コツ、コツ、コツ。


長い廊下に、私の歩くヒールの音が響く。


朝起きて、身だしなみを整えて。

私の一日の最初の仕事は毎日これだ。

だからといって飽きたりしないし、むしろ嬉しい位だ。


“あの人”が起きて、一番最初に話す人が私だから。

丁度あの人の部屋の前まで来た。



片手で制服のスカートの裾を払うと、コンコンコン、と3回ノックした。

「失礼いたします」

まぁこう声をかけても返事が返ってこない事なんてとっくに分かっているけれど。

ドアノブを回し、あの人の部屋に入り礼をする。


大きなベッドに横たわり、穏やかな寝息をたてて眠るのは私が仕える御主人様。

「御主人様、朝ですよ」

声をかけても、すやすやと眠り続ける彼。


相変わらずですね、とほうっと息をついて朝食が乗っているトレーを机に置かせてもらう。

そして彼を揺り動かした。


「…ん、」

うっすらと彼は目を開けた。


「おはようございます、御主人様」

ふわりと微笑むと、彼も眠そうにしながらも少し目を細めて笑う。



「おはよう、鈴」

彼、御主人様は私の事を下の名前で呼ぶ。他のメイドや執事は苗字で呼ぶのに、だ。

まぁ、これも慣れた事ではあるけれど。


私は慣れた手つきで紅茶を淹れる。

「今日はウバにしましょうか」

「そうだね、お願いするよ」


きっちり3分ポットで蒸らしてからカップに注ぐ。

ウバ特有のスッキリした香りがふわりと香る。


「朝食が用意できましたよ」

「ああ、毎日ありがとう」

いえ、と軽く首を横に振るといただきます、と小さな声が聞こえた。


これが、彼に仕える私の仕事。

御主人様、否私の愛する人。


彼に朝食を届ける事から、朝が始まる。

2.設定→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , そらる
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月見だんご | 作成日時:2018年3月31日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。