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「どれどれ。ふふん、ちょっと可愛い文字ね。えーと、『某コミックスの幻の付録、金色のスプラシューターをください』……言ってることが可愛くないわね!?」
コンテクストは悲鳴に近しい声を上げる。
元々某コミックスは付録の作り込みが細かいことに定評があった。それで、数年前に付録としてスプラシューターの模型が配布された。造形が非常に細かく、ターゲット層の少年少女のみならず、ブキマニアや機械好きからも人気が集まった。
そこまではいい。しかしこの某コミックス、なんと10万分の1の確率で付録につくスプラシューターを金色にしてしまったのだ。ソシャゲのガチャも真っ青の確率だ。その金色のスプラシューターがカッコいいのだから、余計人気は高まった。
まあ、それが付録のやることか? と当時は大騒ぎになった。最終的に末端価格は100万Gにもなったと噂されている。とてもじゃないが、二人がやすやすと買えるものではない。
イッカクが素早くナマコフォンで『金色のスプラシューター』と打つと、真っ先に転売サイトが出てくる。元の値段は1000Gにもかかわらず、表示されている金額は6桁や7桁……中には8桁なものまである。イッカクは舌打ちをしてナマコフォンをしまった。
「無理だ、無理。俺がDIYしたほうが早い」
「でもそれじゃ6時間までには間に合わないでしょ? というか金とか持ってないし。それに、まだ他のお願い事だってあるのよ」
コンテクストはその願いが書かれた紙を畳んでコタツの上に置く。次はイッカクが新しい紙を取り出した。
「お、結構丁寧めな字だ。『最新の調理器具が欲しい』だとよ。やっと出来そうなのが来た」
「へえ、いいじゃない。まあワタシは全然料理に詳しくないから、イッカクに頼ることになるけどね」
コンテクストはケラケラ笑う。イッカクは固まった。
「え、俺も苦手だけど。というか下手ってレベルだぞ」
「どのくらいよ?」
「そもそも調理器具がなんなのか分からねえ。コンロとかか?」
「終わりね」
コンテクストは毒気付いた。といっても、彼女もフライパンと菜箸しか思いつかなかった。五十歩百歩である。
本格的に情けなくなってきた。二人は冷や汗をかく。もしも、シュトウで大人気のアイドルなコネジェスに会いたいという願いとかであれば、二人は簡単に叶えることが出来る。しかし、そんな願いはないのだ。よって情けないサンタが完成されてしまう。
「次……次こそよ!」
コンテクストは声を振り絞って箱に手を突っ込んだ。
ラッキーメンバー
アミル
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