シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ41)

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Episode6 -6 ページ41

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平日の夜とはいえ映画館は多くの人でにぎわっていた。

心なしかスーツ姿など社会人らしき人が目立つ。

ドリンクの列に並びながら私は二宮さんに問いかけた。

「二宮さん、何を見るんですか？」

「それはですね、あれです」

「あれ…？」

二宮さんが指さす先を見上げる。

売店とは反対の壁の方に天井から大きな幕が下げられていた。

「あっ」

そこに大きく描かれたロゴとキーヴィジュアル写真に私は思わず声を出す。

「俺たちにぴったりだと思いませんか？」

二宮さんはそう言っていたずらに笑って見せた。

映画館を出ると街は完全に夜の中に浸かっていた。

空を見上げても星は見えないけど、ビルの隙間に月が浮かんでいる。

駅前の繁華街。

軒を連ねる飲み屋に吸い込まれていく人々の間を縫うように私たちは駅へ向かっていた。

「同僚がくれたチケットなんですけど、すっかり存在忘れてて。よかったですAさんに付き合ってもらえて」

「こちらこそ、タダで映画見させてもらっちゃってすみません」

「でも、同僚に感謝しなきゃな。おかげでAさんと一緒に映画に行けましたから」

「っ」

二宮さんはなんだか上機嫌だ。

恥ずかしげもなくそんなことを言うと赤くなってる私を見て口角を上げる。

「少しは意識してくれます？」

「……あのっ」

「んふふ、冗談です」

いつの間にか繁華街を抜けた。

駅に向かう道はいくつかあって、明るい大通りには人があふれている。

前の人にぶつかりそうになると二宮さんは私の腕を引き寄せて助けてくれた。

「ありがとうございます」

「いえいえ。ところで、俺少しだけアイデアが浮かんだんですけど」

「あ、二宮さんもですか？実は私もです」

悪戯に顔をのぞき込む二宮さんに私もそう返す。

二宮さんは満足そうに笑ってくれた。

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