64.ある春の夜の話 by M ページ17
･
｢ま〜くん。一緒に帰ろうよ｣
｢おわっ、凛月!? わざわざ待ってたのかよ｣
｢うん。久しぶりに2人で帰りたかったから｣
｢珍しいな、お前がそんな事言い出すなんて。……まあいいけど。何か話でもあんのか？｣
｢まあね。ちょっと年上らしい忠告でもしてあげようかなって｣
｢じゃあ普段からもうちょっと年上らしくしてくれよ〜……｣
｢ま〜くんが働きすぎだから、俺がバランスを取ってあげてるの……♪｣
｢勘弁してくれ……世話する奴が2人に増えたんだから、負担も2倍だぞ〜？｣
｢『2人』って？｣
｢おまえとAだよ、あんの忘れ物大魔王〜っ！｣
〜〜〜〜
Aの名前を出した途端、凛月は急に黙り込んでしまった。
そのまま何となく、きまりの悪い沈黙が流れる。
｢…………｣
そういえば、さっきの｢忠告｣って何だろう。まあ多分、Aに関することだろうけど。
俺がため息をついて腕組みすると、凛月はぼそりと呟いた。
｢……ま〜くんのヘタレ｣
｢はあ？ 何だよ急に｣
｢わかってるくせに｣
……いや、何のことだかさっぱり。
｢ま〜くんの嘘つき。
そうやって、気持ちに蓋して見ない振りを続けるの？ ずーっと、そうやって生きてくの……？｣
悲しそうな声色で、凛月が問いかける。俯いたその表情は、長い髪に隠れてよく見えない。
唯一、赤く光る瞳だけが、こちらを静かに睨んでいた。
｢……本当は、しーちゃんのこと大好きなくせに｣
強く握られた凛月の拳が、大きく震える。
｢ま〜くんの分際で、俺にだって渡したくない、って言ったくせに……！｣
顔を上げた凛月は――今にも、泣き出しそうな表情で。
｢……それ、中学の頃の話だろ｣
俺は驚いて、そう言うのがやっとだった。
｢ううん、違う。ま〜くんは今でも、しーちゃんのことが大好き。誰より近くで見てるから、俺にはわかる。全く変わってない。
話しかけられれば、ま〜くんは嬉しそうに答えるよね。この間も、わざわざ差し入れの写真撮って、俺に見せてくれたし。
……ま〜くん、小学校の卒業式の日に、しーちゃんに誕プレ貰ったときも同じ顔してた。
なのに、今の関係を失うのが怖いからって立ち止まって。いつしか気持ちに蓋までして、見ない振りしてるんだ。
……自分に甘えてくれる、自分を必要としてくれるしーちゃんが、ま〜くんは大好きだから｣
中学の頃のことなんて、学院に入ってからはほとんど忘れた、そのはずなのに。
それなのに、俺はなぜだか一言も、反論することができなかった。
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Mashiro Lio(プロフ) - もむさん» ありがとうございます。ご指摘に従い修正いたしました。43ページの方はわざとでしたが、誤解される可能性もあると気付いたため、誤解されにくい表現に変えました。 (2020年3月26日 8時) (
レス) id: 6d83265bc4 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - 読むのが遅くて申し訳ない><イラストの方つつがなく進行させて頂きます。返信はいつでも構いませんし、して頂かなくとも結構です（イラストはいつでもコメ頂けると嬉しい！）後半飲み込まれて見落としないか不安ですが…ご依頼ありがとうございました！ (2020年3月22日 4時) (レス) id: e07fd37919 (このIDを非表示/違反報告)
もむ(プロフ) - 3まで読了済み。6ページ 27段目 は入ると→入ると 43ページ 4段目 声は発する→声を発する わざとな気がしますし、厳しめと言われたので一応！ 3も読み終えて、事情を把握しております。3は誤字脱字無かったです！！ (2020年3月22日 4時) (レス) id: e07fd37919 (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - *.ﾟLucifer★of★Princess*.ﾟさん» コメントありがとうございます！そこのシーン絶対に書きたい！と思っていた所なので、キュンキュンしていただけて嬉しいです！これからも頑張りますので、よろしくお願いします！ (2020年3月2日 14時) (レス) id: 088a429c13 (このIDを非表示/違反報告)
*.ﾟLucifer★of★Princess*.ﾟ - いつも、楽しく読ませてもらってます！りっちゃんと桃李くんに取り合われちゃう展開が、すごくキュンキュンしました(///ω///) 続きも楽しみにしてます(≧∀≦) (2020年3月2日 13時) (レス) id: 60e3b9a68e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mashiro Lio | 作者ホームページ：http
作成日時：2019年11月5日 19時
