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「ねぇ、Aさ、なんか私達に隠し事してない?」
「え?」
皆で円になって話してるんだけど、何故か、私の話題ばかり。
「…………例えば…………その髪のこととか。」
わっ、麻未ちゃん、感がいいね。
「…………皆に、言ってないこと、あるけど、隠してたわけじゃなくて......。」
「言いたくないんだったら、言わなくていいよ。
でも、隠し事はあまりしないで。」
響也君は、真剣な表情でそう言った。
「............…………分かりました。
私、皆に、言ってないこと全部言うから。」
「分かった。」
響也君は、表情を瞬時に変えて穏やかな表情になった。
「…………保育園の子と、幹太君は分かるかもしれないけど、私、いつも腕とか頬に痣とか切り傷あったでしょ。
それね、私が外国人みたいだからなんだって。
それで、保育園に行ったら、蹴られて、お弁当食べてたら、水かけられて、帰ろうとしたら、足に切り傷つけられてた。
で、ある日、ある人たちが、私が髪を切って、それを売り払えば、もう開放するって言ってくれたの。
そして、私は髪を切り、男の子みたいな髪型って言う訳。
まぁ、髪を売った金は、全部取られたけどね。
そのおかげで、そのある人たちはここから都会に行ったんだけどね。」
「そ、そんな…………。」
「ごめんね、日和ちゃんも、皆も、こんな話聞かせちゃって。」
「ごめん。A…………。」
「気にしないで下さい。
今気にするのは、私のことじゃなくって、授業のことだと思います。」
「あっ!じゅっ、授業忘れてたっ!」
香苗ちゃんが大声を出す。
「い、急いで戻るわよ!」
日和ちゃんを先頭にして、私達は階段を下り、全速力で廊下を走る。
途中、教室から、目を丸くした先生が見えたが、お構いなしに走る。
「ねぇ、A。
敬語、やめてくんない?」
いきなり話しかけられたので、転んでしまった。
「いたた…………うん、敬語は、少しずつ直すから、待ってて。」
「うん、待ってるよ。」
________でも、直せなかったらどうすればいいのかな。
最悪のパターンは考えちゃダメだ。
だけど、その最悪のパターンが現実になってしまった。
数日後
「えー、松下さんは、昨日をもって、引っ越しました。」
そう、先生が告げた日には、私は、この学校のこのクラスにはいない。
私がいるのは、家の前。
車に乗ろうとしたその時、ふと、響也君の声が聞こえた気がした。
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作者名:副団長・クッキー | 作者ホームページ:
作成日時:2014年12月26日 22時